団体インタビュー
毎日食べるものを届ける仕事
毎日食べるものを届ける仕事
ずっと米の配達をさせていただいていますと、ここ草津でも家族の人数が減ってきたことを実感します。毎日食べるお米を配達するという仕事だから家族やまちの変化がよく分かるのかも知れませんね。三世代同居の家が二世代になったり、お子さんが独立してご夫婦だけになったり。連れあいを亡くし急に寂しい暮らしになった…。高齢者のお客さんには、特に気にかけて話かけるようにしています。
市内のとある新興住宅に配達した時、そこの高齢のお客様が「近くのスーパーが閉まって外に出る楽しみがまた一つなくなった。さびしいね。」と言っていました。高齢者がこれからの人生をゆっくり楽しめそうな住宅街だけに、聞いているほうも残念だし心配になります。
西木亨さん築いてきた信用
父母の米屋を手伝い始めてから30年くらいになります。先代から引き継いだ馴染みのお客さんもたくさんあります。「あんたが子どものころから知ってるよ」なんて言われると照れくさいけど、私たちも「いつもの家に寄せてもらった」って感じです。今だに勝手口から入らせてもらうお客さんや、米を届けるだけでなくハイザーを掃除してから持ってきた米を入れさせてもらうお宅、「いつもの米」といつも注文してくれる人など、信用してもらってる証しだとうれしく思いますね。
戦後の配給制の時代に「あんたのおじいちゃんにお世話になったんやで。あの時は助けてもらったんよ」なんて昔話を聞くこともありました。みんなの暮らしが苦しかった時代は、こうして支払いを年末まで待つこともあって、だから師走は先生だけでなく、米屋も酒屋も走り回っていた。そんな支え合う時代もあって商売を続けてこられたんですね。
配達のエピソード
米屋として・感謝の気持ち
お客さんにはいつまでも元気で暮らしてほしいです。だから商売としては効率が悪いかもしれませんが、高齢者だけになってしまったお得意さんなどには少量ずつ買ってもらうことを勧めています。米屋だからやはり「おいしいお米を食べてほしい」って気持ちがあって、長く置いてカビが生えたり、虫がついたりして米が美味しくなくなったら困るし、それだけ配達の度に顔を合わせられますものね。
また配達の際には、お米と一緒に私たちの感謝の気持ちを一緒に届けたいと思っています。父母が作ってくれた野菜をお米に少しだけ添えてみたり、金魚やセミなど季節を感じるものを折った折り紙に絵や字を添えてプレゼントしたりしています。次の配達の際、玄関にその折り紙を飾ってくださっていた時は本当にうれしかったです。届けたいのはあくまで感謝の気持ちなので、野菜も「家で獲れたもの」「少しだけ」に意味があると思うんですよね。買ってまでするのは少し違うなって。
将来の夢
とは言うものの、この時代に米屋としてやっていくのは大変です。だから小さな米屋の仲間で定期的に集まり勉強会をしながら知恵を出し合っています。刺激になります。チラシを見せ合った時には「配達します」「駐車場あります」と書いてあるのにビックリしたこともありました。「米屋=配達」が当たり前だと思ってたから、そのことをわざわざ書くことに驚いてしまって、時代ですね。
色々なスタイルの米屋があって勉強になったり考えたりすることは多々ありますが、うちでは「懐かしい雰囲気を大切にしたいな」と考えています。店を構えることだって考えはしましたが、やっぱりこれまで続けてきた配達を基本にしていきたい。配達でおじいちゃんやおばあちゃんと話すと、今だからこそこんな商売も必要なんじゃないかと思えるんです。
お米の価値は価格だけじゃない
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