団体インタビュー
やんちゃとお寺のステキな関係
ユニークな職業人
やんちゃ寺には10代から大人まで様々な若者が集まります。誰かと交流したい人は会話やゲームを、一人が好きなら読書でもスマホでも、とにかくここで自分らしく楽しい時間を過ごしてもらうのが「やんちゃ寺」流。
ここにあるボードゲームやカードゲーム、チェスやオセロ、卓球台…これらはどれもメンバーや支援者からの寄付で集まったものだとか。
活動のユニークさは運営するメンバーたちの顔ぶれだってそう。臨床心理士・社会福祉士・学校の先生・看護師・栄養士・アパレル店員・ラジオのDJやなんとユーチューバーまで、様々な職業の人たちがボランティアで集まります。
初めてのメイクやアクセサリー作り、バーベキューなどメンバーが得意なことを教えたり、逆に子どもたちからアプリの使い方を教わったり、と誰がスタッフか分からないのもまた「やんちゃ寺」流といったところ。
誰が居てもいい、みんなに出番ある場所に
副代表の赤花さんです。「私も25歳まで落ち着かず、ないものを探すような毎日でした。 でもあるとき、自分には家庭があって子どももいる。これって恵まれた生活だなと気づいたんです。それからは子どもたちの虐 待や貧困のニュースを見るたびに心が痛み出しました。
未来ある子どもたちに自分も何かできないか、と思っていたら、ここにたどり着きました」
代表の佐藤さんが続けます。
「やんちゃ寺にはおばあちゃん家に行くような感覚で、気軽に来て欲しいです。ここにはこんなに様々な職業や特技をもった大人たちがいます。それぞれの違いや個性を認め合い、むしろ面白がってくれたらいいですね。その延長線上で自分のことや、今までの生き方を認めて受け入れる気持ちを持ってくれたら。
ここは誰が居てもいいし、みんなに出番がある。そんな場所にしていきたいんです」
見て見ぬふり
臨床心理士の佐藤さんは、スクールカウンセラーとして仕事でも子どもたちと接しています。忘れられないできごとがあるとか。「出張で関東に行ったとき、私の目の前でやんちゃそうな格好の男の子がバイクで転倒しました。慌てて駆け寄ったのは私だけだったんです。周りにたくさんの大人がいながら皆遠まきに見て見ぬふりで、その現実にゾッとしました。寂しそうにつぶやくあの子の姿は今も心に残っています」
「今、何かしらの生きづらさを感じていたり、社会でうまくやっていくことが難しい子どもや大人はたくさんいます。そこから不登校や引きこもりなどの非社会的な行動に向かう人がいる一方で、非行や暴力など、ともすると反社会的な行動に向かってしまう子もいます。最近ようやく、引きこもりや不登校などの子を受け入れたりケアするところが公的にも民間でも増えてきました。
でも、同じように生きづらさを感じながらも、非行やヤンキーと呼ばれる中高生たちの居場所となるところがありません。心のどこかに闇をもち、世間に抗ったり強がったりして、悪さすることでしか自分を出せない子どもたち。もちろん、正しく導くための公的機関はありますが、
そこにつながる前に、ちょっと誰かに話したり、自分のことやホンネを聞いてくれるような居場所をつくりたいと思いました」と佐藤さん。なるほど、誰でも参加できる場所に、あえて「やんちゃ」と銘打ったのは、そんな思いがあったのですね。
そうだ、お寺に行こう。
本気で笑える場所
毎月、第3土曜のやんちゃ寺は子ども食堂も開かれます。今日のメニューはおでん。
鍋を囲んだのは約20人。年齢も性別も仕事も、きっと抱えてる悩みだって色々ですが、自然に会話と笑顔があふれます。本当に田舎のおばあちゃん家に集まった親戚のよう。佐藤さんはそっと教えてくれました。「『普段はつくり笑いしかしてないけど、ここは本気で笑える場所』と言ってくれた子がいました。嬉しかったですね。
私たちは手を差し伸べる、支援するなんておこがましいと思っているし、この子たちだって「しんどいやろ」なんて同情されるのも辛い。だからここでは大人も子どもたちと一緒になって思いっきり楽しんでいます」
やんちゃ寺
日時?毎月第1・3・5土曜 14:00~16:00
*第3土曜は子ども食堂もあり(10:00~14:00)
場所?遍照寺(草津3-5-15)
HP https://yanchadera.wixsite.com/yanchadera