団体インタビュー
大路(まち)の“これから”に挑んだ、3人の仕掛人。その1
100年の時を超えて。 復活!きつねおどり
一枚の絵馬から
時は平成に移り、小汐井(おしおい)神社の事務局長として忙しい日々を送っていた中島さん。神社に掲げられている一枚のきつねの絵馬が、いつしか気になりだしたのだとか。その由来を知りたくてあちこち尋ねまわるも誰も知りません。
ようやく一人、当時90歳のおばあちゃんが答えてくれました。「私が嫁いできたころは“きつねおどり”というのがあって、豊作の祈りと感謝のため神社に奉納してたんだよ」
折しも小汐井神社の1140年祭(平成15年)を数年後に控えていた時期。この「きつねおどり」を復活させるべく宮司さんや神社の役員たちとの活動が始まりました。
といっても、資料は何もありません。様々な文献をあたり、他県で行われる「きつねまつり」などを参考に衣装を揃えました。音律はおばあちゃんのかすかな記憶を基に、また振り付けは地元の踊りの先生にお願いしました。
こうして100年の時を超え、きつねおどりが復活。無事に1140年祭で神社に奉納されて以来、毎年の古例祭で踊られています。中島さんは「思いを持ち続けること。それを人に伝えながら行動すること。そうすればきっと夢は叶うんだよ」と子どもたちに言い続けているのだとか。
人を、まちを、つなぐ。 クリスマスブーツ
夢を持つことって、ホント大切ですね。そうそう、夢といえば、ここ大路にはとても夢を感じさせてくれるモノがあります。クリスマスが近づくと、まちのあちこちで見かけるアレ。そう、クリスマスブーツです。
今や大路のクリスマスといえばクリスマスブーツ。街角で、店先で、大小さまざまなブーツがまちを彩ります。ホテルや銀行のギャラリーでは、子どもたちがペイントしたカラフルなブーツが並び、あたかも大路のまち全体がクリスマスを心待ちにしているようです。
このクリスマスブーツイベントの仕掛け人こそ、草津駅西口商店街の会長(当時)だった福井さんです。
当時、福井さんは市商店街連盟や商工会議所に入り、日ごろから大路のまちを盛り上げようと取り組んでいましたが、駅の東側に比べて西側が寂しく感じることが気がかりでした。もちろん大きなショッピングセンターもあって、活気は感じるものの、東側に比べ誰もが入れる一般店も少なく、どこか賑やかさに欠けているように感じていたのです。
発祥の地
そこで目を付けたのがお菓子がいっぱい詰まったあのクリスマスブーツ。実は駅の西側にある㈱近商物産が昭和32年から販売を始め、全国に広がったものだったのです。つまり、草津市の大路こそ「クリスマスブーツ発祥の地」。にもかかわらず、地元にもあまり知られていないのが残念なところ。そこで福井さんら有志が集まり「草津発祥のクリスマスブーツをまちに活かそう」と動き出しました。
近商物産はもとより、西側の店舗や事業所にも協力してもらい、クリスマスブーツのギャラリーを企画。工作キットでオリジナルブーツを作ってもらい、銀行・ホテル・ショッピングセンターなどで展示、道行く人にお気に入りの作品を投票してもらうコンテストも始めました。「年々、力作が増えていますよ」と福井さん。
ブーツがつないだ縁
東日本大震災がきっかけで交流を深めていた伊達市(福島県)の子どもたちにもブーツを届けに行ったことで、遠く伊達市でもクリスマスブーツギャラリーが行われるようになりました。これがきっかけとなり、草津市と伊達市の子どもたちの交換留学「みらいKIDSにぎわい交流事業」も始まり、互いの子どもたちの思い出づくりに一役買うことになったのです。
知られざる地元の特産をまちの賑わいにつなげ、人と人、まちとまちの交流までつくり出したクリスマスブーツ。あのブーツには本当にたくさんの夢が詰まっていたのです。
続きは「大路(まち)の“これから”に挑んだ、3人の仕掛人。」その2へ
コミュニティくさつ129号 2021.12月
「私のホームタウン編 大路」より