団体インタビュー
大路(まち)の“これから”に挑んだ、3人の仕掛人。その2
集い、楽しみ、ふれあう。大路区民まつり
人は増えても…
「昭和40年代に大型店舗が駅前に登場し始め、平成に入るとショッピングセンターや百貨店もできたように、まちの表情は目まぐるしく変わりました。買い物客でにぎわっていた商店街では次々と店が閉まり、買い物かごを手に、立ち話している風景もいつしかなくなりました。暮らしの気配が消えた昼間は静かになり、むしろ夜の方が飲み屋さんのお客さんでにぎやかなくらい。
マンションも次々と建って、今では引っ越してきた人の方が多いっていうのも自然の流れですよね」
なるほど。人は増えても、つながりは薄れたわけですね。そこで大路区まちづくり協議会では伊勢村さんたちが中心となり、縁あって同じ地域に暮らす住民同士が、集い・楽しみ・ふれあうイベントを創ろうということになりました。
課せられた大命題
実はそれまでも、区域のまつりはありました。ただ、小学校を会場にしていたこともあり、参加者は限られていました。新しい「大路区民まつり」は誰もが気軽に参加できるものにしたい。ふらっと通りかかった人でも立ち寄りたくなるようなイベントにすることが大命題。なんとも高いハードルです。
そこで伊勢村さんたちは、大路まちセン前の空き地と公道で開催する計 画を立てました。通行止めにする必要があるため、何度も警察に行っては断られ、やっとのことで許可をもらうことができたのです。
「住民同士のコミュニケーションが希薄になりつつあるのはヒシヒシと感じていましたし、一人でも多くの人に参加してもらいたい一心でした。もう必死でした。」と伊勢村さん。
立ち止まらない
いかがでしたか。きつねおどりの復活・クリスマスブーツ・大路区民まつり……。どれも今の大路を象徴するものですが、その陰にはそこに暮らす人の「まちへの想い」がありました。伊勢村さんが最後に言ってくれました。「この大路に住む一人ひとりが誇れるまち、住んで良かったなぁと思えるまちになって欲しいですね」
冒頭に紹介した写真集「大路今昔物語」の巻頭には“大路井の記憶絵”という絵があります。昭和25~30年ごろの大路の様子を俯瞰的に捉えたものです。3人の仕掛け人をはじめ、当時を知る人たちの記憶を集め、福井さんが一枚の絵に描きました。お店も街並みもずいぶんと変わったことがわかります。
こうして新しいものを取り入れながら変えていくことと、辛抱強く守っていくことの調和が、このまち「大路」の魅力なのかもしれません。
コミュニティくさつ129号 2021.12月
「私のホームタウン編 大路」より