団体インタビュー
屋台が運ぶ、本と会話と笑顔。
DIYでモバイル本棚
空の青と芝生の緑に白木の屋台が良く映えます。屋台というよりは「動く本棚」といったイメージ。実はこれ、池田さんがDIYで造ったものです。3連式で、いざ移動となればコンパクトに折りたためる優れもの。池田さんは休日ともなると、このモバイル本棚にお気に入りの本を積み込んで、公園やイベント会場へと出向くのです。
会場でいざ本棚を広げると、本が好きな人もそうでない人も、興味深く近寄ってきます。本をパラパラとめくりだす人、その本について質問する人、おススメ本を持ち寄って互いに紹介しあう人…、と本を仲立ちにした会話があちらこちらで弾みます。
本が取り持つ縁。そこに本があるからこそ知り合った人たちの、なんとも不ゆるやかなコミュニティが生まれます。
本をもって出かけよう
サードプレイス 第3の居場所
池田さんは現在32歳で子育て真っ最中。仕事も家庭も充実した生活を送る一方、大変忙しい毎日です。貴重な休みを使ってでも活動する理由を聞いてみました。
「育休で会社を離れていた時に『社会人がまちとつながる方法って何だろう』と思ったのがきっかけでした。会社員として、だけじゃない自分にできるつながり方みたいなもの。それで私たち世代には地域や地元の人たちとつながれる場所、家庭でも職場でもない“サードプレイス(第3の居場所)”が必要だなと感じて。
もちろん好きな趣味に没頭するのもいいんだろうけど、できれば色々な人と出会えたり、自分たちの持っているものが誰かの役に立ったりと、社会的な意義やつながりをもちたかったんですね。
少子高齢化やデジタル化が進んで、『公共』というもののとらえ方が広がっているように思うんです。そんな今だからこそ、働き盛りの私たち世代が、地域に関わっていく意義も大きいんじゃないかと思っています。
私たち世代にとって、この活動が“まちの入り口”になればいいなと思います。ただ、家族に迷惑をかけることもあるので、それは今後の課題です…(笑)」
ぬか床のように
「学び床」って印象深い名前は、“ぬか床”からイメージしたのだとか。ぬか床に野菜を漬けると、色々な菌が作用しあって美味しい漬物ができるように、学び床でも色々な人が集まり互いに影響しあって、人も地域も熟成していければとの思いを込めました。
「本から出発して、人が集まり話し合える場所やつながりをつくっていきたいですね。例えば『豊かに暮らせるまち』なんてお題を決めて、自分ならこれ!という本をそれぞれ持ち寄ってもらったりして。
ちがう分野の職業、ふだん関わりのない世代、専門知識をもつ人やそうでない人…と、みんなが本を縁にして寄り合い、学びや気づきをそれぞれがもって帰って、自分の地域や職場で活かせたら素敵だなと思います。
特に私たちのような若い世代なら地域で自分を活かせるチャンスもたくさんあるんだと思います」
人とのつながり方
草津川跡地公園や夢本陣などでのイベントには学び床をはじめ、休日カフェをするコーヒー好きの人や絵本の読み聞かせをする人、小さな古本市を開く人などのユニークな活動が集まります。共通するのは自分の好きなことを持ち寄って、みんなと楽しい時間を創ること。そしてお客さんや出展者同士がゆる~くつながるところ。若い世代の皆さんが始めた「人とのつながり方」は、これからのコミュニティの形の一つかもしれませんね。
明日はあなたのまちに、モバイル本棚がやってくるかも。
あなたも本を片手に訪ねてみませんか。
学び床FB
https://www.facebook.com/manabidoko/
コミュニティくさつ134号 2023.1月
「はたらき世代、まちも楽しむ。」より