RSS通信

まちサポくさつ (公財)草津市コミュニティ事業団

団体インタビュー

おうちヘアカットで家族のコミュニケーションを

CH北山ヘアカット研修会

家族のヘアカット

ヘアカット研修会  「へぇ~」「なるほど~」
驚きとも感心ともとれる声が部屋の中に響きます。この日、長寿の郷ロクハ荘のホールに集まった人たち。子育て中のママが多いようですがパパの姿もあります。ご年配の女性もみえます。皆さん手にはハサミとクシを、そして眼は講師の手元にくぎづけです。

 今日は「CH北山ヘアカット研修会」のホームカット体験会。参加したパパは「子どもがまだ8か月で美容室にも連れていけないでしょ。髪が伸びてきたので家でカットしてあげたいなと思って、妻に誘われて一緒に参加しました」
 70代の女性は「車イス生活の夫の髪を切ってあげたくて参加しました。私も家の中ばかりだと気が滅入ってしまうので、こうして外に出て学べるのは楽しい」と笑顔がこぼれます。

行けない人たちがいる

ヘアカット研修会2  家庭でできる簡単で安全なヘアカット技術をプロの美容師が教える。CH北山さんのこのユニークな活動。きっかけは代表を務める中村さんの経験でした。それは美容師として京都で店を開いていた中村さんが持病で入院していた時のこと。
 ベッドの上で中村さん。
 「入院生活も長くなると美容室にも行けなくなってしまう。入院患者だけじゃない、自宅での介護が必要な高齢者、他人に身体を触れられることが苦手な障がい者、じっと座っていられない子どもだって、そう。
 世間には美容室に行きたくても、その人なりの理由があって行けない人がたくさんいる。そんな人に家族が家でカットしてあげられたら…。安心できる人が、安心できる場所でする安心のヘアカット。そのために自分たち美容師は何ができるんだろう」

 こんな思いをずっと、温めてきた中村さんは60歳を機に京都で活動を始めます。美容師をはじめ介護や福祉の専門家など中村さんの思いに共感した有志も集まり、活動は草津や大津にも広がっていきました。

子どもの次は父母を

ヘアカット研修会3  メンバーの美容師さんです。「元々、美容室に勤めていました。店の同僚は仲間でありライバル。毎日、技術を磨くことばかり考えて、心にゆとりがもてなかったんです。子育てで仕事を離れた時、私自身も子どもを美容室に連れていく大変さを経験したことがあります。
 そうして復職を考えるころ、この活動に出会ったんです。お店への現場復帰も考えていましたが、今は元気な父や母もやがて老いていくことを考えると、この活動は世の中に必要なんだと感じて、このまま続けたいという気持ちが勝りました」

 だから、この美容師さんは活動に参加してくれた若いパパやママに必ず言っていることがあります。
 「お子さんがおうちヘアカットを卒業したら、次はぜひお父さん、お母さんの髪を切ってあげてくださいね」って。

届けるために

ヘアカット研修会4  ヘアカットの体験会、講習会にはたくさんの方が参加されます。家族の介護をしている人、障がい者の家族など、ヘアカットに困っている人たち。切羽詰まった人も少なくありません。
 認知症の妻を看る70代の男性は、たとえ講習の途中であっても、毎回きっちり1時間で切り上げて帰ります。それは家で妻が待っていて、それ以上、家を空けられないから。

 左手にマヒがある人が参加されたこともありました。丁寧に教えたつもりでもカットが思うようにできず、次から講習に来なくなってしまいました。
 指導にあたった美容師さんは自分の未熟な伝え方に歯がゆさと勉強不足を感じたのだとか。ヘアカットはプロでも、人に教えるとなると話は別。だから毎回、新しい気づきがあって、参加者からも意見をもらいながら、わかりやすく伝える工夫を重ねます。
 例えば言葉。講習会では専門用語は使わず、「ハサミ」「クシ」と耳慣れた言葉を使います。
 例えば技。プロがお店で使う技術でなく、素人でも簡単にキレイにできるコツを伝えます。それもこれも本当に必要としている人にこの技術を届けたいから。

 耳が遠い人、手話で話す人、手や足が不自由な人……。今は他の参加者と同じペースで進められない人のために「ぼちぼちコース」なんてつくれないか、とメンバーの思いは広がります。

ヘアカットでコミュニケーション

子どもヘアカット体験  CH北山さんには大切な“こだわり”があります。それは団体のテーマにもしている「ヘアカットでコミュニケーション」
 そう、家族がするヘアカットは単に髪型を整える作業ではなくコミュニケーション。お互いが笑顔で心も豊かになる癒しの時間になってほしい。「髪を切ってもらうのは信頼している人にしかできないことだから、会話がなくてもつながりを確認できる行為なんです。ムリしておしゃべりしなくたって、髪に触れてるだけで『沈黙のコミュニケーション』になるんです」

 資格や経験をまちに活かそうとするCH北山さん、こらからも注目です。


CH北山ヘアカット研修会HP
https://culture-kitayama.com/



コミュニティくさつ134号 2023.1月
「はたらき世代、まちも楽しむ。」より

前のページに戻る