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まちサポくさつ (公財)草津市コミュニティ事業団

団体インタビュー

草津の夏、とっておきの青。

NPO法人「青花製彩」 峯松孝好さん

夏の朝に咲く青い花

アオバナ花びら  草津の人ならぜひ知ってもらいたい「草津あおばな」。夏の朝に咲く、小さてかわいい花です。学術名は「オオボウシバナ」、ツユクサの変種です。花は美しい青色で、江戸の頃から友禅染の下絵描きの染料として重宝されてきました。その見事な青は京言葉で「うつし色」とも呼ばれていたのだとか。

 ただ、この青を取り出すのは大変です。毎朝、花びらを摘んでは絞り、和紙に染み込ませていく。暑い盛りの作業は、その過酷さから「地獄花」とも呼ばれていました。
これも時代の流れか。やがて着物離れや化学染料に押され、染料としてのアオバナの需要が減るにつれ、アオバナ畑も姿を消していきました。

 その後、このアオバナから食後の血糖値の急激な上昇を緩やかにする成分などが発見され、食用製品への活用など草津あおばなの保存と活用が進められています。小中学生が毎日使う給食の食器にもプリントされているんですよ。

スゴい花なのに

峯松さん  アオバナと峯松さんの出会いは意外なものでした。今から7年前の2016年。当時、峯松さんが店長を務めていた飲食店へアルバイトに来た高校生がいました。農業高校に通う彼は卒業論文で研究していたのがアオバナでした。

 草津の中でもアオバナの栽培が盛んだった下笠に住む峯松さんも、それまでアオバナのことはそれまでまったく知りませんでした。知れば知るほどスゴい花なのに、今では農家が3軒(当時)にまで減っていることを知り、さらにビックリ。
そこで峯松さんは試しにと自分で育ててみることに。
美しい。なんとも美しいのです。
すっかりあおばなブルーに魅了された峯松さん。翌年にはなんとアオバナ農家の中村繁男さんに弟子入りしたのです。

 中村さんの畑に通いだした峯松さん。朝7時から花びらを摘み、昼前にはそれを絞って和紙に塗り重ねる作業をひたすら続け、夜は飲食店の仕事へと向かう毎日。こうして2年間、いつしか中村さんからも作業を任せられるほどになりました。残念ながら中村さんは亡くなられましたが、今でも“師匠”です。

新しい希望

峯松さん2  忙しくも濃密な2年間を過ごした峯松さんにはある思いがありました。「染料以外でも、この青を活かせないか」。当時、アオバナの成分を抽出した粉末はあったものの、それは茎葉からとったもの。そう、青くはなかったのです。

 念ずれば、花開く。
 同じく青い花色の活用を考えていた湖南農業高校との共同研究で、花の汁を食品に添加できる粉末の開発に成功しました。遂にあの青を食品に着色できるようになったわけです。すぐに市内のホテルや和菓子店から注目されるようになりました。
 新しい希望が生まれた草津あおばな。次は生産を増やす必要があります。そこで応援してくれる仲間の後押しでNPO法人『青花製彩』を設立。草津あおばな館近くに約1反(1000㎡)の畑を借りてアオバナ栽培を始めました。
 「会社にしなかったのはアオバナで利益を追求するつもりがなかったから。300年受け継がれてきた草津あおばなはみんなのものです。このアオバナで草津を盛り上げたい想いをカタチにするには、非営利組織であるNPO法人としての運営が合っていると考えました」

発想の逆転

アオバナ摘み体験  地獄花とも呼ばれたアオバナの「青を取り出す」作業。とりわけ大変なのは花摘みです。1反と言えば、昔なら地域総出の広さ。なんとか省力化できないか?と掃除機で吸ってみたりと試行錯誤しましたが、花びらだけをとる繊細な作業だけにやっぱり手作業となります。

 そこで発想を逆転。
 せっかくなら市民の皆さんに摘んでもらったらどうか。そして、積んだ重さに応じて報酬を出させてもらおう。つまり有償のボランティア。すると、なんと毎日約50人もの参加があったとか。コストのかかる作業をアクティビティとして市民の皆さんに体験してもらうみごとな発想です。

 「皆さん楽しんで摘んでくれます。集中するので瞑想にも似た感じなのかもしれません。毎日来てくれるリピーターさんもいるし、子どもたちには夏休みのお小遣いにもなってるみたい。この子どもたちは大人になってもきっと畑の青い光景を忘れないと思います。できれば草津の子どもたちみんなに体験してほしいですね」

青い景色を草津に

アオバナ  峯松さんは未来を見つめます。「市内にはたくさん耕作放棄地があります。そんなところにもアオバナ畑が広がって欲しいですね。あちらこちらで青い景色が広がる草津の夏。そこでは子どもも、高齢者も、障がい者も…。たくさんの人たちが青い花を摘んでくれる風景を想像しています。そんな風景こそ草津の宝だと思うんです。師匠の中村さんが言っていた『草津の土地でないと育たないアオバナ』を、みんなで地域の産業に育てていくことで先人たちにも恩返しできたらなと思います」
 先人たちの努力が若い力に受け継がれ、絶望は希望に変わりました。
 この夏、草津はアオバナの青に染まります。


NPO法人「青花製彩」のHP
https://www.big-advance.site/c/135/1814


コミュニティくさつ136号 2023.8月
「草津の夏、青と緑の物語。」より

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