団体インタビュー
涼やかに吹け、緑の風。
放置される竹林
ここは志津・青地にある西方寺の裏庭。手入れされた竹林の傍らには青竹で組まれたジャングルジムやブランコ。
そう、この竹林を手入れしている団体が「近江の竹となかまたち」です。
「竹林に入ると時間が止まったよう。不思議な感覚になって、とても落ち着きますよ。皆さんに一度、来て欲しいですね」と日焼けした顔で話す柏木さん。存在感を示している遊具も実習にきた大学生たちと一緒に造ったのだとか。
今、全国で放置竹林が問題となっていることをご存じですか。手入れされず伸び放題となった竹は防犯上の問題はもちろん、光を遮り、他の植物の生長を阻害したり、他の植物の成長を阻害することも。道をふさいだり、割れたり倒れたりするのも危険です。竹は繁殖力が強く、放っておくとドンドン広がっていきます。また根は横に浅く張っていくので土砂崩れを引き起こす危険性も高まるのだとか。
放置されてしまうのは持ち主の高齢化はもちろん、その持ち主の高齢化はもちろん、持ち主が誰かわからないこともあります。昔のように竹を活用する場面が減っているのも放置化に拍車をかけています。
整備と活用。なるほど、放置竹林には両方のアプローチが必要なようです。
5年前は素人
こんな放置竹林の問題に取り組む「近江の竹となかまたち」。ここ西方寺のほか、大津や近江八幡の竹林も手がけます。2mほどになった幼竹はメンマに、さらに生長したものは竹炭や竹チップにします。チップは家庭菜園や園芸用の土壌改良材として使えたり、家畜の寝床に敷くと蚊が寄ってきません。そういえば、西方寺ではヤギが竹チップの上で快適に寝ていました。これらは、道の駅やくさつファーマーズマーケット、マルシェなどで販売しています。
「竹は本当にすごい植物で捨てるところがありません。周りの人には『竹が地球を救う』なんてふざけ気味で言ってるんですけど、実は本気で思ってます(笑)」。どっぷり竹の魅力にとりつかれた竹のスペシャリストも5年前までは全くの素人だったとか。
意外なきっかけ
「その時は突然やってきました」と当時を振り返る柏木さん。
5年前のある日、たまたま観ていたテレビ番組でメンマづくりをやっていたのだとか。「普段、ラーメンで何気なく食べていたメンマが竹から作られていく様子は新鮮でした」
更に日本の各地で放置竹林が問題になっていること、こんなに竹林があるにもかかわらず国内に流通するメンマの98%が中国産であることも番組で知りました。柏木さんの心が震えました。
まずはメンマを自分で作ってみたくて仕方ない。夜も寝付けない。翌朝早くに近くの竹やぶから伸びたタケノコを取ってきて、メンマづくりに挑戦です。皮をむき、半分に切ってから煮て、塩漬けします。「運が良かったのか、これがメチャ美味しかったんですよ。もうハマりましたね~」
ここからの柏木さんの行動力がすごい。地元の町会長に相談し、近くの放置竹林を紹介してもらいました。住宅地の中にある約300㎡の竹やぶです。のこぎりなどの道具類から軽トラまで揃え、職場仲間にも声をかけて整備を始めました。
でも、いざ始めてみると分からないことだらけ。そこで竹林整備している団体を調べ、甲賀や近江八幡、遠くは広島へ足を延ばしたこともあります。
竹がつなぐ
仕事に子育てにと忙しい世代。「休日3時間だけ」の約束を家族と交わしての作業でしたが、次第に本格的になっていきました。竹チップが土壌改良に良いと聞き粉砕機を、また竹炭には消臭効果があると聞いて炭化器も購入。休日にはパパ友・ママ友にも声をかけ、家族ぐるみで竹林整備を楽しみました。根を掘り返すとカブトムシの幼虫なんかも出てきて、竹そっちのけでみんな夢中、なんとも心地よい汗です。
そんなある日、「タケノコ採れたよ」と同級生があげたSNSの記事を見つけます。その同級生は西方寺のご住職。ずいぶん会ってなかったこともあり連絡してみました。
すると「実は竹林の手入れに困っている」とのこと。竹がつないだ旧友との再会。話はすぐにまとまりました。「活動を始めて人や思いがつながり出しました。竹には本当にたくさんの可能性を感じます」
いっしょに竹林整備
あの日、たまたま観たテレビから始まった5年間は何とも濃密な日々。「そろそろ本格的にやってみたら」。純粋に、熱心に竹と向き合う柏木さんに妻が背中を押してくれました。今、柏木さんは若い世代のボランティアを募集中。「私たちの年代はなかなか来にくいけど、竹林にいると普段の生活では得られない経験があります。休日ボランティアぐらいがちょうど楽しいんじゃないかな」。
空へとまっすぐ伸びる竹のように、柏木さんの夢は今日もグイグイ伸びています。
西方寺の竹林へいこう!
かぐや姫はいませんが、愉快な仲間たちが待ってます。
あっ、竹に寝そべるヤギもいます。
近江の竹となかまたちのインスタグラム
Instagram ouminotake_to_nakamatati
コミュニティくさつ136号 2023.8月
「草津の夏、青と緑の物語。」より