団体インタビュー
おべんとばこに、おにぎりちょいとつめて
おいでやす
夏の疲れが出始めるこの季節。「夏バテ」ならぬ「秋バテ」なんて言葉もあるようです。そんな時に美味しいおにぎりはいかがですか。昔ばなしでは、コロコロと転がって穴に落ちたり、カニがまんまとサルにとられてしまったりする、日本人のあのソウルフードです。
ここ常盤では美味しいお米や農産物が獲れる利点を活かして、まちを元気にしようと「ときわおにぎりプロジェクト」が始動。コロコロ転がるおにぎりのように試行錯誤し、優しく握られるおにぎりのように少しずつ想いを一つにしてきたプロジェクトのこれまでとこれから。さあ、ごはんにしましょう。
うだるような暑さが続く、とある夏の日。常盤まちづくりセンターは朝から活気にあふれていました。
調理室では女性陣が常盤の食材をふんだんに使った料理に腕を振るっています。隣の部屋ではエプロン姿のオジサンたちが、慣れない手つきで弁当箱に盛り付けている姿がどこか愛らしさもあったりして。
食事を楽しみにした地元の高齢者がここに集まるまで、あと1時間。それまでに80食を用意するのだから手もよく動きます。そう、今日は「ときわおにぎりプロジェクト」による2回目の食事会「おいでやす」の日。
ちなみに今日のメニューは肉じゃが・なすの田楽など10種類(有料)。自慢のご飯はおにぎりでなく、ライスバーガーにしました。こんがりと美味しそうです。驚くのは添えられた漬物や納豆からデザートの「ういろう」まで、すべて手づくりだということ。見学に来た女子大生が熱心にういろうの作り方を教わっていました。
そうこうしている間に最初のお客さんが来たようです。
まずはやってみる
「ときわおにぎりプロジェクト」の正式名は「常盤地域まちづくりセンター農業振興活性化プロジェクト」。これでは硬すぎて伝わらない、と可愛い通称がついたわけですね。メンバーは現在29名。地元の民生委員や健康推進員、農家、行政職員、まち協職員、ボランティアなど色々な分野の人が集まっています。
きっかけは平成30年の常盤まちづくりセンターの建替えでした。常盤のセンターには地元農業の振興を進めるためのスペースが組み込まれたのです。このスペースを有効に活用しながら常盤の農業を振興するにはどんなことができるのか?県内の農家レストランを視察するなど模索する年月を経て、おにプロがスタートしたのが2021年のことです。
「考えるばかりでなく、とにかく何かやってみよう、という感じでスタートしました。色々と試行錯誤しながらプロジェクトの軸を見つけていこうと。まずは地元の人自身に常盤の農産物の美味しさを知ってもらいたいと最初の食事会を企画しました。
その時は真冬でもあったので、おにぎりとおでんを中心にしたメニューで、各町内会から50名を招待しました。特に引っ越してきた新しい住民さんに喜んでもらえたし、これをきっかけに何人かがスタッフとして加わってもらえたのも嬉しかったですね」
おじいちゃんのつぶやき
やりながら考える。おにプロのスタイルは至る所で発揮されます。なにせ一度に50~80食もの量を用意するのは、経験がないと難しいもの。食材の量、それぞれのおかずが同時にできあがるようにする手順と調理時間、盛り付け方なんかも工夫が必要です。
そこで2回目となる今回は、何度もメニュー会議をした上で10食分のリハーサルも実施。盛り付けは写真に撮って、弁当の包装紙に使いました。1回目の反省をしっかりと次につなげます。
常盤まちづくりセンターの所長さんにも聞きました。
「常盤は人口減少と高齢化が進んでいる地域。まち協でも独り暮らしの高齢者宅への配食や日帰り旅行などの事業は実施してきました。日帰り旅行では独り暮らしの男性がしきりと『楽しいなぁ』とつぶやいていたのが心に残っていたんですね。それで今回は食事だけでなく人との会話も楽しんでもらいたいと、センターに来てもらうことを考えました。センターまで来られない高齢者には快く送迎をしてくれるボランティアさんもメンバーにいてくれるので実現できました」
いっしょに、おにプロ
おにプロの活動は始まったばかり。 “やりながら考える”試行錯誤は続きますが、夢は膨らみます。「常盤の美味しいお米や農産物を地元の魅力としてみんなに知ってもらいたいですね。それを仲立ちにして常盤のつながりをつくっていきたいし、なにか困難を抱えている人の支えにもなりたいです。常盤のお米は本当に美味しい。いくつかの品種が栽培されているので、利き酒ならぬ利き米なんかもしてみたいですね。早くプロジェクトの軸をみつけて活動を軌道に乗せたいです。そのためには若い人たちの参加が欠かせません。私たちと一緒に、おにプロを楽しみませんか」
そうそう、今回の食事会「おいでやす」では、参加した高齢者から「今度はバイキングがいいなぁ」なんてリクエストもあったのだとか。常盤住民の期待は高まるばかり。これからが楽しみですね。あなたもおにプロに、おいでやす。
コミュニティくさつ135号 2023.10月
My home town story 常盤より