団体インタビュー
子どもの笑顔だけはボロ儲け
ヘンテコな名前
ここは志津・西方寺の境内。開基1111年を祝う祭りが地元の人で賑わっています。なかでも子どもたちが夢中になっているのが駄菓子屋さん。
見つけました。子どもたちの輪の中で、ひときわ笑っているこの人こそ、ダガシカシオテラの店長こと山村卓也さんです。背中に「駄」のTシャツ姿がなんともカッコいい。
こんなにTシャツが似合っても、子どもたちに「駄菓子屋のおっちゃん」と呼ばれても、山村さんはプロの駄菓子屋さんではありません。本職は別にもちながら、休みの日にここ西方寺や市内各地のイベントで駄菓子屋「ダガシカシオテラ」を開くのです。もちろんメンバーも地元志津を中心としたボランティアさん。
それにしても、駄菓子で地域づくりって、なんともユニーク。「ダガシカシオテラ」って名前もヘンテコだし。うん、興味津々。
2時間歩いても
京都で生まれ育った山村さんが草津に引っ越してきたのは7年前。
父親から「知らない土地での生活は大変。子どもの名前まで覚えてもらえたら住みやすくなる。とことんやって皆さんから一目置かれるぐらい自分を売り込みなさい」といわれたこともあって、子どもが小学生になったのを機に、自主的に朝の見守り活動を始めました。
そんな山村さんはもちろん、子どものころから大の駄菓子好き。
「近所に4軒ぐらい駄菓子屋さんがあって、ハシゴしてました。中学生の頃も友だちと『ちょっと行こか』というと、それは駄菓子屋さんのこと。高校生になっても、親からもらう昼食代500円のおつりをもって学校帰りに駄菓子屋さんへ。電車賃まで駄菓子に使ってしまい、家まで2時間歩いたこともあります(笑)。駄菓子屋さん特有のあの匂いが大好きで、今でも癒されます」
自分でやってみない?
会話が生まれる場所
仕入れ担当の山村さん。駄菓子好きの山村さんにとって駄菓子の卸問屋はもう宝の山でした。
「食べたいお菓子ばかりで、あれもこれもと買い揃えたい(笑)」と予算オーバーで自腹を切ってまで仕入れてくるから、メンバーもあきれ顔。開店に向けての値段設定にも苦労しました。元の金額を考えると、どうしても端数が出てしまう。でも、子どもたちが自分で計算しやすく、お小遣いで買える手ごろな値段にしたいと頭をひねります。備品は地元や山村さんの勤務先から提供してもらいました。いよいよ開店です。
「今の子どもたちって意外なことを知らないんです。パッケージの開け方、当たりくじの場所、駄菓子の食べ方……。だからスタッフが教えてあげる。おっちゃん・おばちゃんが自慢できる場所でもあるんですよ」と山村さん。
「親御さんが100円ピッタリに買えた子どもに『計算できて、えらいやん』ってホメたり、子どもたち同士でも教え合ったり、自然と会話が生まれるのが、駄菓子屋さんの良いところですね。
駄菓子って買ってその場で食べるから、どうしてもゴミが出てしまう。ゴミを拾ってきてくれた子には『ありがとう』ってアメ玉を一つ。駄菓子を通じたやり取りにこんな教育的な視点も出てきます。主役は子どもだけど、地域ぐるみの大人のがあってこそ成り立つ場所なんです」
駄菓子屋のおっちゃん
「子どもたちからは道で出会っても『駄菓子のおっちゃん』って声をかけられます(笑)。嬉しいですね。手伝ってくれる大人や来てくれる子どもが増えて、子どもたちが地元の大人たちの顔を知れば知るほど地域は安全な場所になると思います。だから今、駄菓子だけでなく射的やスマートボールなど縁日のような雰囲気の場を、たくさんの大人たちとつくっていけたらなと考えています」と、駄菓子で地域づくりを目指す山村さん。
「何を買おうか迷ってるかわいい姿や、目をキラキラ輝かせている子どもたちを見ているのが何より嬉しい。駄菓子屋を始めてよかったなと思います。
みんなボランティアなので労働力は0円、儲けも0円。
でも子どもの笑顔だけはボロ儲けです」(笑)
コミュニティくさつ138号 2024.1月
「やってみたらええやん!」より