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まちサポくさつ (公財)草津市コミュニティ事業団

団体インタビュー

“急がば回れ”的 夢のかなえ方

中間水路とびわ湖まもり隊 伊庭健治さん 中島美徳さん 西村貴充さん

目を背けてしまう

中島美徳さん  母なる湖「琵琶湖」は今日も静かです。目の前に広がるのは帰帆島と矢橋の間、地元で「中間水路」と呼ばれている場所。
ここ老上西では、今、この中間水路に注目が集まっていること、知っていますか?
きっかけは地域での住み良さや賑わいを創ろうとする市の計画※づくりでした。

「老上西学区は大きな病院やショッピングセンターもあって、住み良いまちです。ただ、40年経った帰帆島と中間水路にゴミがたくさん捨てられているのが問題になっていました。繁殖した水草なんかが腐って、悪臭も放っています。正直、地元では目を背けたい場所。近江八景『矢橋の帰帆』も、今や見る影もありませんでした」と中島さん。

要望だけでは…

伊庭健治さん  こうして、計画は立命館大学の協力も得ながら、市と一緒に検討と社会実験を重ね、帰帆島や中間水路の利活用を中心に据えたものになりました。水上レジャーやアクティビティなど、地元だけでなく訪れる多くの人が水辺を楽しめる空間、水辺の暮らしを提案したものです。

 見ているだけでワクワクする夢のある計画も、実現するには多くの壁がありそうです。「計画づくりの中で、この空間が国・県・市と管理するところが複雑に入り組んでいることがわかりました。計画の実現には細かな調整が必要だし、もちろんお金もかかります。超えなきゃいけないハードルがいくつもあって、多くの時間と根気が必要です」と伊庭さん。

 「それに計画づくりの中で、地元は行政への要望だけでいいのか?住民自らがココを変えていく為にできることがあるんじゃないか、と前向きな意見が地元からも出てきたんです。誇らしかったですね」

軽トラ1台分

トラックいっぱいのゴミ  目を背けたかった場所を地域の宝物に変えるために自分たちにできること。この難問に対し、地元はシンプルな答えを出しました。まずはゴミ拾いから始めよう!
こうして生まれたのが「びわ湖まもり隊」。誰でも参加OKということで、私たちも行ってみました。

 それにしても遠目では美しい中間水路も、水辺にくるとずいぶん様子が違います。ほんとにゴミの量がスゴい。タバコの吸い殻・缶・ペットボトル・ビニール袋・コンビニ弁当の容器から、なんと三角コーンやドラム缶まで。もう、あらゆるゴミが捨てられています。

 代表の西村さんです。
「車で通りすぎると気づかないけど、歩くとゴミの多さに驚きます。車からのポイ捨てだけじゃなく、釣り人のゴミや発泡スチロール箱なんかも。あと、風や波の加減で琵琶湖のゴミが流れてきてここに溜まってしまうんですね。毎回、軽トラ1台分ぐらいにはなります。花火大会の後なんか本当にすごい量でしたよ(笑)」

はじめの一歩

西村貴充さん  「毎回、30~40人程度参加してくれます。子ども・高齢者・学生・企業さん・釣り人の会など様々な人が参加してくれるのが嬉しいですね。ゴミを拾いだすとつい時間を忘れてしまうので、毎回1時間って決めています。月に1回、1時間だけのボランティアです。ムリのない程度で楽しく続けることが地域でのコツだと思います」と西村さん。

「ゴミ拾いと言うと面倒なイメージがあるかもしれませんが、やってみるとこの1時間が本当に清々しくて。爽快ですよ」
なるほど、ゴミを拾うことで地域への愛着が湧くし、身近な場所になる。まさしく、まちづくりの第一歩ですね。

 今、老上西学区まちづくり協議会ではアウトドア企業と連携して、中間水路でのカヌー体験会も始めました。
前回の体験会に参加した西村さん曰く「水の上から見る自分のまちはまた格別。湖上から見る琵琶湖や矢橋の景色は必見です」

カヌー体験  びわ湖まもり隊の活動のスタート地点は矢橋公園。
「もののふの 矢橋の船は速くとも 急がば回れ 瀬田の長橋」
そう、ここはあの「急がば回れ」の語源となった場所。中間水路を自分たちの大切な場所にするという大きな夢を、目の前のゴミを拾うことから始めた老上西学区。「矢橋の帰帆」の急がば回れ的チャレンジに目が離せません。


※ 老上西学区まちづくりプラン(草津市版地域再生計画)
「これからも、ずっと住みたい、住んでみたい健幸なまち」を基本理念に2022年に老上西学区まちづくりプラン「みんながつながるウォータータウン〜帰帆島及び中間水路を地域の資源とした新たな水辺の暮らし〜」を策定。https://oinishi-kusatsu.jp/




コミュニティくさつ139号 2024.3月
My home town story 老上西より

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