団体インタビュー
はじめまして、とびら文庫です。
リラックス空間
本がつなぐ縁
そしてなんといっても、この空間を特徴づけているのが、たくさんの本、本、本。
よく見ると棚ごとに名札がついてます。「最初は私の本ばかり並べてましたが、徐々に棚主(たなぬし)さんが増えてきてくれて」と田邉さん。
ん、棚主さん?「棚ごとのオーナーさんです。本好きの皆さんが棚のオーナーとなって、自分の本をここに並べてくれるんです。来てくれたお客さんは気に入った本を安価で買うことができるしくみです。シェア型書店といって各地に広がっています」
でも中古本なら、市内にも大型店がありそうです。
「私も経験ありますが、中古本屋さんって“まとめていくら!”みたいな買取りになってしまいますよね。本好きにとってはとても悲しくて忍びないものなんです。一冊一冊に大切な思いが詰まってるから。ここでは、自分の本棚を誰かと分かち合いたい、って人が棚主さんになってくれるんです。本が人との縁をつないでくれるんですね」
なるほど。本がつなぐ縁って素敵ですね。
なにより本が好き
家族総出のDIY
「退職したら教師時代にはできなかったことをしよう」と、油絵やハンドメイド、旅行などを楽しんでいたという田邉さん。でも行き着いたのは、やっぱり本でした。
「母の介護も一段落し、子どもたちも巣立って、自分の“これから”について考えました。それでこの部屋の模様替えを始めたんです」
荷物を移し、押し入れを取り払う。壁紙は貼り直し、照明器具もおしゃれなものに取り替えました。縁側の脇にあった大きな木は夫がチェーンソーで切り、タイルを敷いて出入口にしました。もう、家族総出のDIYです。
本棚にはしまい込んでいた本たちが並び、自身の絵やハイドメイドの品、旅行先で買った小物たちで装飾。こうして、使われていなかった和室が、本のある今風おしゃれ空間へと生まれ変わりました。
扉をあけよう
「大好きな“本”を通じて地元にも何かお役に立てないかと考えた私の答えが、とびら文庫です。この街道筋も昔はずっとお店が並び賑やかでしたが、今ではずいぶん寂しくなりました。高齢化は進んでいますが、近所なら歩いて来れて、おしゃべりを楽しめる元気な人はまだたくさんいます。ふらっと立ち寄って、“これは”という一冊と出会ったり、誰かとつながったり、そんな場所になって欲しいですね」
そんな田邉さんの想いは膨らみます。
「今、大河ドラマで注目されている平安文学を味わう読書会を企画中です。また、不登校の子を支える団体と一緒に子どもたちの居場所としても使ってもらいます。教師時代に十分寄り添えなかった後悔もあって、ココで何か手伝えることがあるかな、って」
とびら文庫。素敵な響きです。「大好きなアーティストの歌詞からつけました(笑)。人生っていくつもの扉を開けていくことだなと思って。人とつながるときも、何かを始めるときも。ここに来てくれたことが何かの扉を開くきっかけになってくれれば嬉しいですね。私も一つ扉を開けて、ここを始めました」