団体インタビュー
行けば、なんとかなる・・・ そんなお寺へ
檀家でない人たちが集まる
戦国時代、信長の焼き討ちで炭になったお地蔵さまを地域の人が発見。もう一体の地蔵の体内にいれて拝んだという「西方寺子育て地蔵ものがたり」というお話から生まれた創作曲「炭になったお地蔵さま」は西方寺の檀家の出である音楽家の方に作曲してもらい、ここでの披露が叶いました。当日はなんと150名もの親子が参加。志津地区ではそれぞれ町内会でも8月に地蔵盆がありますが、7月に行われるこの「地蔵祭」は、それとは別の寺独自の行事です。さらに驚くのは最近できた近隣の新しい住宅地の親子がたくさん来てくれたこと。この方たちは5月の「花まつり」にも来ていただいています。
檀家でもない新しい住民の参加、これにはいくつかの要因が重なっています。一つはここが普段から地域とお寺さんのつながりが強い地域だということ。だから一寺の一つの催しでも各町内会の回覧版で各戸に知らせる協力が得られました。また新しい住宅地の近くにはお寺がなく、そのような行事もなかったこと。そして何より、お寺さんが「檀家だけでなく地域の子どもたちのために」とお寺を開こうとしたことです。
地域への開き方
実は西方寺、先代から「地域に開かれた寺」として色々なことをやってきました。戦争も末期の何もないころ、大阪から子どもたちが疎開してきました。親や友だちと離れた疎開生活、心細いなかで地域の子どもたちと一緒に遊んでもらう場として寺を開放したことが、現在の子どもが集まる活動へとつながっています。寺の裏山にある里山も寺の部屋だって空いている時は自由に使ってもらっています。
また浄土宗には「鉦講」という行事があります。鉦を鳴らして念仏を唱える行事で昔は青年会が継承していましたが、青年会も減り、今でも続けているところは少なくなりました。西方寺ではこの鉦講の対象を小学生にした「子ども鉦講」として始めました。地域の子どもであれば宗派が違っても参加できるのは、この寺だけです。
教育は学校だけでない
西方寺ではボーイスカウトやガールスカウトなどのスカウト活動も行っています。イギリスを発祥とするスカウトはキリスト教の活動だと思ってる人もあるようですが、スカウトの基本理念は神(仏)に真の心を捧げ信仰心をつくり、国に忠誠を誓う心を育むこと。日本で神や仏と言えば、神社や寺ということになります。だから西方寺のように寺や神社があまり宗教色を出さずにスカウト活動の拠点や活動支援をしてきました。西方寺がスカウトに関わるようになって早 年。今までキャンプ、たけのこ掘り、野草取りなど多彩な活動をしてきました。今ではスカウトで育った子どもも大きくなり、寺の行事に参加してくれる子もいます。
よく言われることですが、子どもたちにとって小さな時に行う情操教育は大切。スカウトなども掟(ルール)や誓いといった心の情操も大事にしています。寺子屋活動から始まり、このように教育の場としてお寺が地域に果たす役割は大きいと思っています。
お寺に行けばなんとかなる
こうやって地域の中でのお寺の役割、地域に身近なお寺を考えると、「誰でもどうぞ」という開き方が見えてきそうです。地域の中で、あるいは生活の中で何かあった時、「お寺に行けば何とかなるのでは」と地域のみなさんが思ってくれる存在になりたいし、そのためには宗派を超えた対応を積み重ねていくしかない。お陰さまで檀家の方々も非常に理解があって、「法要や宗派以外のこともどんどんやってほしい」と言われていて、本当にありがたく思っています。
志津地区では、宗派の異なる7ヶ寺で揃って托鉢を行い、その浄財を仏教女性会などに助成しています。今後もお寺のネットワークで社会貢献を行っていきたい。西方寺は、これからも 世紀の心のオアシスとして、命の尊さを考え、心のふれあいを大切にし、青少年の健全な成長を願い、地域に開かれ、愛され、親しまれるお寺として日々精進努力していきたいと思っています。
(聞き手・仲野優子)
草津市青地町1146
電話 564-2277 / FAX 564-5966