団体インタビュー
町内会加入2割からのチャレンジ
本当に助けられるだろうか…
こんな中、町内会長に市の災害時要援護者登録制度の名簿受け取りの要請依頼がきました。災害など万一の時、家族以外の第三者の支援がなければ避難できない要援護者の中には、同じマンションであっても町内会に加入していない人の名前も名簿に載っている可能性があります。個人情報という「名簿の重さ」、町内会に加入していない人も含まれている可能性に責任を感じ、当時のマンション管理組合の理事長に相談。すると「町内会をまるごと管理組合の部会に組み込んではどうか」との答えが返ってきました。意外でした。居住者は管理組合への加入が義務づけられています。その管理組合の部会となるわけですから町内会も自然と全戸加入となるわけです。それには高い壁がありました。全居住者の3/4以上の賛成を得て管理組合の規約を改正する臨時総会を開く必要があったのです。
町内会に入るメリット?
管理組合の理事会は協力的でした。「新たに町会費を徴収しない」など負担感を極力なくす案を作成し、臨時総会の準備を進めてくれました。また町内会の資料作成や当日の説明は、お二人の元町内会長が力を貸してくれました。臨時総会前には居住者との意見交換会も実施。ここでは意見がぶつかる場面もありました。それは「町内会に入るメリットは何なのか?」ということ。それには「渋川の地域に住む一員として、地域住民としての役割を果たすことも必要ではないか。まちが自分に何をしてくれるのかという権利ばかりを言うのでなく、自分たちのまちを一緒につくっていく地域住民としての義務も考えてもらえないか」と答えたそうです。実際に言うには勇気のいることだっただろうと想像します。
こうしてこぎつけた臨時総会の結果はなんと審議不可。参加者が定足数に充たなかったのです。審議さえされない-折れそうな気持ちを支えてくれたのは管理組合の理事の皆さんの「定期総会でもう一度挑戦しよう」の言葉でした。今度は総会に出席できない居住者からは委任状を出してもらうよう依頼し、提出してもらえないお宅には一軒一軒連絡してくれたのです。こうしてついに管理組合と町内会が一緒になる大きな転換となる決議が定期総会でなされました。平成24年12月のことでした。
このまちにお世話になります
マンションの見えない大きな価値
現在の管理組合の理事長は言います。「資産としての価値を維持することが大きな目的となる管理組合だけではマンション内のコミュニティや居住者同士のつながりをつくるには限界があります。町内会の活動があってはじめてコミュニティが豊かになっていくと思います。そして、そのコミュニティの豊かさは結局マンションの見えない価値へとつながっているんですよ。」
人のつながりが煩わしいからマンション暮らし。マンションに付きまとうこんなイメージを払しょくするような今回の話。「行政が何をしてくれるのか」ばかりでなく、「自分たちには何ができるのか」の視点に気づいた人が多い地域ほど、コミュニティを育み足腰の強い地域になっていくのだろうなと感じる取材となりました。
渋川南三町内会
稲谷秀雄さん 高森嘉樹さん 出呂町馨さん 佐藤徹さんにインタビュー