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まちサポくさつ (公財)草津市コミュニティ事業団

団体インタビュー

不法投棄!困った場所をまちの庭へ

~出屋敷団地 あゆみの会~

ゴミがゴミを呼ぶ

ゴミの投棄  ここは旧草津川堤防、大津湖南幹線から琵琶湖へと約800mの区間、「あゆみの会 緑化公園」の看板が掲げられた堤防の法面には花壇や藤棚が、そして以前は川底だった場所がきれいに整備されています。ここが物語の舞台。主人公は堤防のふもとにある出屋敷団地の皆さん。前町内会長の故・中澤嘉一郎さんや町内の皆さんが荒れ放題の堤防と川底への大量の不法投棄に気づいたのは6~7年前のこと。空き缶・空きビン・ペットボトル・タイヤ・布団・自転車・バイク・テレビ・冷蔵庫までそれは酷いものでした。清掃日にはトラックが満載になり夏にはひどく臭う。拾っても拾っても止まない不法投棄。まさしく「ゴミがゴミを呼ぶ」状態でした。

整地というより開拓

川底 中澤さんは町内会で声をかけ有志24名で「あゆみの会」を結成。市と相談し管理協定制度を利用して堤防の草刈りと花を植えることにしました。川底は町内会で市から借り受け、砂をまいて整備しました。何から何まで手づくり。出屋敷団地はもう40年以上経つ住宅地。今では147世帯の半数以上が65歳以上の高齢者世帯で、ほとんどが現役時代はサラリーマンです。大工仕事も農作業も素人に近い状態です。特に大変だったのは不法投棄の処理。川底だけあって半分埋まったゴミをロープで一つひとつ引っ張りあげました。ぼうぼうの草は刈っても処分しきれない量で花を育てるための堆肥にしました。草の下にはゴロゴロと大きな石が待ち受けています。これも手づくりのふるいにかけました。「整地というより開拓ですね」と四方さんの言葉が、高齢化したまちの住民にとってどれほど過酷なものだったのか雄弁に物語ります。

 「ゴミがゴミを呼ぶ」のまた逆も真なり。草刈りとゴミの撤去、そして花を植えだしてからは目に見えて、ゴミを捨てる人が少なくなりました。会の美化活動は月に一回ですが、「花壇の草花はね、それぞれの家庭で園芸をしている人が種や苗・球根を分けてくれるんです。毎日私たちはおしゃべりしながら草引きしていますわ。天気の良い日はここでお弁当を持って来て食べることもあります。私が家にいなければ孫はまずここを探しに来ます。」と笑い合いながら中澤さん・屋敷さん。

一人ひとりのだいじな場所「まちの庭」

堤防  実は出屋敷団地には自治会館はあるものの、これまで公園はありませんでした。夏まつりも警察から使用許可を得て町内の道路で行っていました。きれいになった堤防と川底が今は町内会の憩いと人のつながりを育む大切な場です。夏まつりも防災訓練も、グラウンドゴルフなど高齢者となった軽運動もこの場所。夏のラジオ体操やキャッチボールなど子どもたちや親子の声も戻ってきました。主婦が集まり寄せ植え講座も開催されました。「ここは私たちのまちの庭。家で閉じこもりがちの人が花壇を見にきたり、散歩をしている人から『きれいな花ですね、毎日ご苦労さま』と声をかけられると、もっとがんばろうと思う」と4人は口を揃えます。

公共空間をつくる

4人  まちのみんなが協力して公共空間をつくり、そこでコミュニティを育む。一人ひとりの「私のだいじな場所」になっていった活動が模範とみなされ、この度、「みどりの愛護」功労者国土交通大臣表彰受賞者*として決定しました。私たち草津市民にとっても誇らしいことですね。

 実はこの場所、草津川跡地基本構想にかかり数年後には市に還され「子どもから高齢者まで、市民の健康づくりをテーマにしながら、身近に憩いやすらげる緑の空間を創出する場」として生まれ変わる予定です。少し寂しい気もしますが「それまでは私たちのまちの庭だから、日ごろから手入れしこの環境を維持していきたい。誰かと、何かと出会えるコミュニティの場として使っていきたい」と皆さんは今日も種を撒くのです。


出屋敷団地あゆみの会
四方 隆さん 山本 修さん 中澤利江さん 屋敷ユウコさんにインタビュー

取材・掲載

コミュニティくさつ105号 6月号
「公演は誰のもの。」より

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