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まちサポくさつ (公財)草津市コミュニティ事業団

団体インタビュー

まちの“いざ”に備える 「やってみなけりゃ、わからない」

馬池町自治会

使えない体温計

中谷緑郎さん  立っているだけで汗ばむ暑い日、4人の男女が馬池町公園に集まりました。今日は防災倉庫の備品の点検日です。集まった男女は馬池町自治会防災部の面々。一般募集で決まったという馬池町防災トレードマーク「救馬くん」が描かれた防災倉庫の中は、今日もぐんぐん温度が上がっています。

 「ここに食料品は備蓄していません。人数分を確保するのが難しいし賞味期限があるのでね。いざという時の救急箱だって、買って備えておけば安心ってわけじゃない。以前の点検では、夏場の暑さで体温計の水銀が伸びきっちゃってダメになっていました。よくあるスプレー缶の薬品も暑さで破裂する恐れもあります。こんなことはこうした点検を通じてわかったこと。何でもやってみなけりゃわからないものです。」
 今では、高温を嫌う備品や場所をとる発電機などは別の防災倉庫に備えています。ちなみに発電機も交代で毎月、始動点検をしているとか。故障や燃料の確認だけでなく、使い方を忘れないための工夫です。2か所の防災倉庫の鍵も自治会長・副会長・自治会防災部など24人が持っていて、緊急時には誰かが開けられるようにしています。

“いざ”というときのリーダー

斉藤雅夫さん  馬池町自治会には「自衛消防隊」と「自治会防災部」という2つの組織があります。どちらも町内会の組織ですが町内会発足時からある自衛消防隊は火災が起きた時などの初期消火や混雑の整理などにあたります。メンバーはその年の役員から割り当てられるので基本的には毎年変わります。
 阪神・淡路大震災の教訓から市の「自主防災組織」結成の依頼を受け結成されたのが防災部です。2009年、当時の町内会役員の8人が講習を受け、市の市民防災員の認定を受けスタートしました。今でも規約では「部員は市民防災員の認定を取得した者や取得する予定の者」と定められています。これはまちの防災・減災活動を自主的に継続して行い、“いざ”というときには実際に動ける意識・知識・技術をもったリーダーとなってもらう考えによるものです。今では一定の救助や救命の知識・技術をもつ市民防災員14名による部となりました。

 斎藤さんは言います。「やってみないとわからないことばかり。器具の使い方や操作も忘れてしまうこともしばしばです。人工呼吸だって救命講習を4回続けて、やっと間違えることなくできるようになりました。講習を受けたから安心するのでなく、繰り返し行うことで身につきます」。ここでも「やってみなけりゃ、わからない」が出てきました。

まちの見え方が変わった

防災訓練1  「24年前にここに引っ越してきました。当時は仕事ばかりで、地域のことも知らない、知り合いもいない状態。ある年、町内会の役員を引き受けることとなり自治会の副会長になりました。すると町内を歩いているだけでも、危ないところ・災害時にまちに足りないものまで気づくようになりました。今ではドラッグストアで新しいタイプの絆創膏や包帯などがあるとつい手に取ってみたくなるし、使用期限なんかも見るようになりました。また、まちには色々な経歴をもつ人がいるとわかってきました。意識することでまちの見え方が変わってきたのです。2つの組織のあり方は今後の検討課題ですが、順番で広く住民にまちの防災について関心をもってもらえる自衛消防隊と、実際のリーダーとなってもらいたい防災部、今のところ上手く両輪として機能しています。」

“今”を知る生の情報

防災訓練2  やってみなけりゃわからない。これまで8年間、防災部の活動をやってきてわかってきたことがあるそうです。それは、リーダーだけができる・知っているだけではダメだということ。当たり前ですが、実際の“いざ”では住民同士や隣近所で助け合わなければなりません。大きな地震や火事だけでなく、最近では異常気象による集中豪雨から身近で悪質な犯罪まで私たちを取り巻く“いざ”は広がっています。

 「そこで大切になるのが『生の情報』です。『この家は高齢者の独り暮らしだ・認知症の方がいる』といった情報に加え、『今は田舎に帰っている・怪我や病気で入院されている』といった “今”を知る「生の情報」が大切です。みんなが把握しなくても、誰かがその人の“今”を知っておくこと。それには日ごろの隣近所の付き合いしかありません。そのため、町内清掃・炊き出し訓練、防災地図の作成など、防災部ではできるだけ顔を会わせる機会をつくるように心がけています。こうした機会が増えるほど、情報が行き交い、“いざ”のときに活かされると思っています。将来的には班ごとに防災訓練をできたらいいなと思っています。」

すばやく重なり合う

防災訓練3  「草津市災害時要援護者登録制度を始めとした“いざ”というときのための公の制度がうまく活用されるためには、いくつかの情報がすばやく重なり合うことが必要です。住民個人のプライベートな情報が集まる民生委員や町内会、その人の“今”を知る生きた情報を持つ各班(組)、それぞれのつながりが命を救います。まちづくり協議会はそれらの地域を連携し、あるいは行政とのパイプ役になっていく必要があります。迅速な行動と避難、適切な支援ができるよう町内では日ごろのつながりをつくってもらいたいし、まち協としても学区としての動き方も考えていきたい」矢倉学区未来のまち協議会の会長も務める中谷さんは熱意を込めて話してくれました。


馬池町自治会
中谷緑郎さん 斉藤雅夫さんにインタビュー

取材・掲載

コミュニティくさつ106号 2015.9月
「“もしもの備え”~やってみなけりゃ、わからない。~」より

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