団体インタビュー
♪背伸びの運動から、ハイッ♪ ご近所さんをつなぐラジオ体操
まちの日常風景
♪背伸びの運動から、ハイッ♪ 朝の清々しい空気に包まれ、ラジオ体操のおなじみの声が町内の公園に流れます。ラジオ体操というと子どもたちの夏休みのイメージがありますが、ここ、平井西町児童遊園にはスタンプ台紙をぶら下げた多くの子どもたち以上に高齢者が集います。音楽が止み、子どもたちがスタンプを押すための行列ができる一方で、あちらこちらで大人たちの談笑が始まりました。子どもたちの姿が少なくなったころ、大人たちは談笑を続けながら草むしり。「このまま地域清掃?」と思いきや、それもわずか5分で終了。挨拶を交わしながら家に帰る人、連れだってウォーキングに行く人、自宅の前を箒で掃き出す人…ここまでわずか30分の光景は、年間を通じたこのまちの日常です。宮島一三さんと山本公子さんにお話を聞きました。
人と出会うのは心に良いこと
山本さんは日々、このラジオ体操をノートに記録しています。
その日の天候や気温、参加者数にちょっとしたメモが記されています。それによるとこのラジオ体操は夏だけでなく一年を通じて雨の日以外は毎日行われ、30名ほどが参加しています。10cmの積雪も、マイナス1℃の寒い日も気にしません。始まったのは2年前の11月2日。そういえば公園の端っこには、今日が538回目を伝える看板がありました。ちなみに500回記念となった7月にはみんなで記念撮影をしたとか。また毎週金曜日にはそのまま公園の5分間草引き。取材した日はちょうど金曜日でした。
このラジオ体操、きっかけは宮島さんが首の手術をしたことでした。術後、ホームドクターから「ラジオ体操は体に良いこと、人と出会うのは心に良いこと」と言われたことを近所で立ち話したところ、「近ごろ私も運動不足でね。やりますか!」とごくごく自然な流れで始まったとのこと。
“毎日”と“ちょっとした”
「たかがラジオ体操」と侮るなかれ。一人ひとりの健康を支え、生活のリズムを刻むだけでなく、“毎日”することでまちにも効果をもたらしています。それはつながりづくりと安否確認。この平井西町も高齢化が進んでいます。体操に参加するメンバーにも独り暮らしとなった人が数人いるとか。気がつけば一日中、誰とも会話をしない日がある人もいます。毎朝、体操をしてご近所さんとのちょっとしたおしゃべり。この「毎日」と「ちょっとした」がポイントのようです。「毎日みんな大体決まったポジションで体操しているんです。自然と横の人と会話が生まれる。安否確認にもなりますし、健康状態だってわかります。何より『おはよう』と声をかけ合うだけでも『来てよかった』と思うんです。参加者の最高齢は92歳ですから、私も『しんどい』なんて言っていられませんね」と宮島さんは言います。「これまで“○○さんのご主人”なんて呼んでいた人とも、普通に挨拶、会話が生まれるようになりました。町内に変化が出始めたような気がします」とは山本さんの弁。
重くしない。ごくごく自然体で
「毎日」と「ちょっとした」…その辺のコツを山本さんに聞きました。「とにかく重くしないことです。この会には役も当番も会費もありません。それどころか会の名前すらありません。誰でも参加OK。町内外の人も歓迎です。会の名前をつけて活動費や補助金をもらったりすると、町内外の人はダメとか制限が入ったりするでしょ。私は毎日、ラジカセを持っていく係だけど、それは家が公園の前だからというだけ。引っ張る人と支える人がいれば回るものです。あとはごくごく自然体で重くしないことが長続きする秘訣だし『あそこに行けば誰かいる』という安心感みたいなものをかもしだしているんだと思います」なるほど、ナットクしました。
この日の参加者に知り合いを見つけました。「毎日しているでしょ。これに参加しないと体から悪いものが出ていかないような、なんか気持ち悪いのよ」「このラジオ体操は、一日の句読点なんですよ」今朝も平井西町児童遊園にはラジオ体操の音楽が流れます。
♪背伸びの運動から、ハイッ♪
平井西町
宮島一三さんにインタビュー