団体インタビュー
お父さん、緑のチャレンジ
高齢化。見えだした問題
若草・岡本町西を中心に活動する志津南緑化ボランティアの会。「若草のまちができて30年。ご多分にもれず高齢化が進んでいます。今では65歳以上が800人以上、60歳以上でみると1,100人を数えます。これだけ高齢化が進むと従来のやり方では難しい問題が出てきました。その一つが『緑の保全』です。町内会清掃だけでは追いつかないのが実情。それは各家庭でも同じことなんです」
若草では緑道や公園などの公共空間に加え、各家においても緑化協定が結ばれています。緑の垣根や植え込みが巡らされることで、あの緑の景観が保たれているわけですね。しかし「緑の手入れ」は意外と重労働、維持管理経費もかかります。高齢になると尚更、厳しい状況となります。
もう一つ、若草に目立ってきた問題、それはチラホラと増えだした空き家。転勤や高齢化に伴い、便利の良いマンションに移り住む人も増えてきたとか。完全に売り家にならずに、転勤などで一定期間だけ主のいない状況になっている家でも手入れされない状況も見られます。つまり、公共空間と個人空間、つまり両方で緑の保全、景観の維持が難しくなってきました。まちの景観を保つことは、そのまちの価値を保つことにもつながります。今、この問題に取り組んでいるのが「志津南緑化ボランティアの会(垣根剪定グループ含む)」。約50名の大部分は定年後のお父さんたちです。
業者さんと間違われるほどに
会の活動は多岐にわたります。若草にある8か所の公園では樹木剪定だけでなく砂場の天地替えまでします。夏場の植栽への水やりには苦労させられます。年間3~4回ある一斉清掃では住民の高齢化もあり、前もって機械で前裁きをしておきます。加えて近年は通学路や調整池での剪定・除草。まちを流れる伯母川では数年前の冠水を機に川底の草や泥の除去まで行います。胴付長靴を履いて作業する様を、住民が業者さんと間違ったというのもうなずけるほどの重労働です。
もちろん住民からの依頼があれば個人宅の垣根剪定にも応じます。空き家となった家の緑が伸び放題で隣家から依頼され、家主の許可をもらって切ったことも。高齢化は高齢者宅や独居世帯を増やしていき、ますます緑の維持は大変になります。枝を切るのも大変、切った枝をゴミ袋に入れるのも大変、それを処分するのはもっと大変。依頼の仕方がわからなかったり、空き家などでは個人資産の問題もあり、善意だけでは難しいことも出てくるので、今後は民生委員さんと連携をとることも検討中だとか。昨年度の緑化ボランティアの会(垣根剪定グループ含む)の活動日は延べ78日・645人というから、いかに必要とされた活動かがわかります。
お父さんにハマった緑の手入れ
これだけの活動をみると何とも大変な作業です。もちろん大変だけど、お父さんたちは意外と楽しんでいます。まちがきれいになること、みんなでやり遂げたときの達成感、なにより自分たちのできることでまちの役にたち、住民に喜んでもらえることは、やりがいにつながるようです。
取材した降矢さんと舟木さんも若草に住んで30年、町内の役が回ってくるまで町内のことはもちろん、環境にも緑化にもまったく無関心だったと言います。町内清掃だって奥さんに任せっぱなしだったとか。以前はまちのことに関心も、割く時間もなかったお二人ですが、この活動でまちに仲間ができたこと、顔を合わせれば会話ができるようになったことが何より嬉しいとか。中には活動から発展して趣味仲間になった人もいます。また50人もいると、まちの情報も自然と耳に入るようになりました。夏場に痴漢が出たと聞き、パトロールも始めました。仲間とのコミュニケーションがまちを守り、まちづくりへと発展しています。程よい作業と会話と達成感が伴う「緑の手入れ」は、お父さんたちにピタッときたようです