団体インタビュー
“好き”は自分も時代も超えるんだ
教科書にも載らない歴史
本能寺の変(1582)、関ケ原の戦い(1600)、黒船来航(1853)、大政奉還と王政復古(1867)…。当たり前な話ですが、歴史の授業で出てくる、国を揺るがす大きな歴史の合間には、それらにつながる大小さまざまな歴史が至る所で繰り広げられています。それは今、あなたがいるその場所でも、です。石田さんは教科書にも載らない、そんな地域の歴史に思いを馳せ、趣味として自ら調べながら、草津市観光ボランティアガイドの一人として草津を訪れる人に紹介しています。
「三井の晩鐘」で知られる三井寺(大津市)のすぐ近くで育った石田さん。三井寺・近江神宮・日吉大社が遠足場所だったという石田さんが歴史に興味を持ったのは、ごくごく自然なことでした。結婚で草津に来ました。子育てや家事に追われ、自分の時間が作れるようになったのは子育てが落ち着いてからのこと。そのころ、草津市では市史の編纂が行われていました。それに伴って市が編さんに携わった先生を講師とした歴史講座の参加をきっかけに、観光ボランティアとしても活動を始めました。
自分の足で調べよ
「もっと、草津の歴史を知りたい…」自分の楽しみだけでなく、観光ボランティアガイドの活動が石田さんの知的好奇心を刺激します。NHK大河ドラマのテーマが決まると主人公や主要人物、はたまた付き人まで関心を広げ、草津宿本陣との縁を調べます。「この時に草津宿を通っているのでは」と想像を膨らましては、草津宿街道交流館に大福帳(宿帳)の記録を調べてもらったり、資料の展示もお願いしました。自分たちは観光ボランティアガイドとして、その足跡をたどるハイキングを企画します。
ひとたび火が着くと徹底的に調べるのが石田スタイル。ネットなどで手がかりを見つけては、図書館や街道交流館、他市の資料館で文献を紐解き、時には遠く九州まで一人で現地調査に行くこともあるとか。「高校の時の国語の先生からいつも『自分の足で調べなさい』って言われてたのが身についちゃって。ケータイやネットはあくまで参考や調べるきっかけに留め、やはり文献を紐解きます。独特の筆文字もずいぶんと慣れました。
気になることがあると次に進めない性分で、寝る前や朝起きてすぐに本で確かめることも度々あります。現地調査に行くときは同じように調べている人と交流し、資料を分けてもらうこともしばしば。ちょっとした発見でも、自分の仮説が実証されれば嬉しくて、それらの資料をきちんと整理して、またガイドのときに活かします。」
女性の視点で思いを馳せる
ブームとなる前からの“歴女”に地域の歴史を紐解く楽しさ、極意を聞いてみました。
「教科書で習う歴史がまずはベース。そこに地域の歴史をパズルのようにハメていくって感じです。もしかしたら…って、仮説を立てて調べる。証拠が見つかり仮説があたっていると素直に嬉しいし、歴史の一コマがつながっていくことが楽しい。それをガイドのお客さんに伝えて、草津への理解が少しでも深めてもらえるともっと嬉しい。
私にとっての歴史の主人公はどうしても女性になります。いつの時代のことでも、『子どもを国許に残してこの女性はどんな気持ちで草津の街道を通ったんだろう。どんな景色を見ていたんだろう』って、いつも母として、女性として歴史に寄り添うと、妙に共感できるんです。」
石田さんの話からは、時代、時代で輝いていた人物も決して特別な存在ではなく、今の私たちと同じように家族や子どもに対する愛情をもつ『一人の人間』として浮かび上がってきます。