団体インタビュー
ゆく川の流れはとだえても
田中千秋さん
セミの声で飛び出す
草津川といえば子どものころ、特に夏の日を思い出します。今のようにクーラーなんてないから、窓は開けっ放し。家の2階で勉強していると、「ジジジ…」とアブラゼミの鳴く声が草津川から聞こえるんですよ。そんな大合唱の中で、「シャンシャンシャン…」と別のセミの声がしてね。「あっ、クマゼミだ」って家を飛び出しました。堤防まで駆け上がると、すでに近所の友だちたちが何人か。顔を見合わせて、みんなで大笑いしました。当時、この辺りではクマゼミは滅多にいなくて、どの木にいるのか、誰が先に見つけるかって競争です。遊び道具も少ない時代だから、そんなことでも立派な遊びになるんです。子どもたちはセミの声を聞き分ける耳をもっていました。