団体インタビュー
いただきます、ごちそうさまでした。 「ふじっこ青空ファーム」の挑戦
8500と560
10%の壁
富士産業が市の小学校給食の調理を始めたのは平成11年。当時の残さい率、つまり子どもたちの食べ残しはかなり多かったとか。「少しでも食べ残しを減らさなくては…」調理過程の見直し、行事食やイベント食などの工夫、調理機器や設備の技術革新、施設の改築も後押しして今では10%にまで減りました。とりわけ調理過程の見直しや衛生管理など、「食の安全」を守る企業ならではの技術と努力を重ねてきました。
「食の安全と美味しさの両立が難しい部分です。たとえば食中毒を出さないためには加熱が必要です。でも、しすぎるとかえって味も見た目も落ちる。加熱温度や時間を的確に調整しながら、美味しさも追求する。美味しくなければ、結局は食べ残しにつながってしまいます。」と山本さん。
「残飯率10%…」山元さんが続けます。「ここに壁があります。ここからがなかなか減らない。実は提供側でできることはここまで。あとは子どもたちや各家庭での食に対する知識や意識を変えていく必要があると考えました。つまり食育ですね」。この食育を進めるために始めたのが、食育農園「ふじっこ青空ファーム」です。
地域とつくる食育農園
「畑と食卓、生産者と消費者を近づけることで、食の知識やありがたみ、地産地消で旬を食する美味しさを知ってもらいたい」そんな思いが込められた青空ファーム。下笠町には7000㎡の畑が広がります。今日もキャベツ・ジャガイモ・タマネギ・ニンジン・サツマイモ・黒枝豆などが大きく育ちます。食育を通して地域に貢献したい畑だから、近くの小学校の児童たちに苗植えと収穫体験をしてもらいます。いずれ、市内の全小学校の子どもたちに来てもらいたいとか。
子どもたちは土から掘り出したタマネギがもつ、透明感を知り、直にかじった甘味に歓声をあげます。「お米を洗剤で洗った」「魚の絵を描かせたら切り身を描いた」「ジャガイモが土の中でできると知らなかった」…。若い世代や子どもに対するウソかホントかわからないような噂も耳にする中、「ここでの体験を食卓で話題にしてもらいたい。子どもたちから親御さんに話をしてもらいながら、少しずつ関心が高まればいいですね」とは食育農園課の高田さんの弁です。
思いもよらなかった
実は高田さん、3年前までは同社の役員でした。草津市在住であること、今も変わらぬ愛社精神と面倒見の良さで、定年後に農園の責任者になりました。とはいうものの農業はまったくの素人。「地元農家の方にボランティアとして関わってもらい、一つずつ教えてもらいました。地域の方の協力がなければ到底できなかった農園です。」ここでも地域とのつながりを見つけました。
この青空ファームでは今、国が進める農業の働き手不足の解消と障がい者の雇用促進のための「農福連携」として、6名の障がい者を作業員として雇用しています。「素直で前向きな子たちばかり。もちろん仕事だし、危険が伴う作業もあるので叱るときはきちんと伝えます。障がいのある子とない子が互いにプラスになっていて、みんなが一つになって野菜をつくっています。」と高田さん。
子どもたちの食育のために始めた農園ですが、思いもしなかった効果が生まれているとか。全国展開する富士産業では大勢の従業員がいます。そこで五月病や職場の人間関係のストレスで心のバランスを崩した社員の農園研修をここ青空ファームではじめました。自然に向き合い、仲間と共に作物を育てる体験。特に、障がいを抱えながら、黙々と額に汗し土と向き合う従業員の姿に、研修生が多くのものを感じとって、自分の気持ちを立て直してくれているとか。うれしいですね。