団体インタビュー
ポールウォーク、背筋が伸びると明日がみえる。
始める理由
小枝さんとポールウォークとの出会いは1年前、知人が開催する説明会でのことです。ポールを使うことで右足を左手が、左足には右手が一歩一歩サポートしてくれます。自然と背筋が伸び、歩幅は大きくなり、足の着地もきれい。左右のバランスを保つことで自分の体のゆがみを知り、努力するべき目標がはっきりわかる。股関節や骨盤の痛みに悩んでいる時期でもあった小枝さんはこの出会いに「体中で感動した」そうです。
老人クラブに勤める小枝さんは、すぐに交流のある高齢者の皆さんに紹介しましたが、返ってきたのは意外な反応でした。みんなすでにポールウォークの存在もその効果も知っていたのです。「それなら何で始めないの?」。素朴な疑問に「小枝さんが紹介するなら始めたい」との声が返ってきたとか。そう、高齢者はたとえ関心があっても、いざ使うとなると、そのきっかけや動機づけが欲しかったのです。「そうだったのか」。小枝さんはさっそく指導者としての資格をとり、自宅の一角をサロンに改修。ポールの販売と指導をはじめました。
歳を重ねるということ
「老人クラブで働くようになって色々なことを教えてもらいました。高齢者は『賢い人・努力する人』の集まりだと改めて思います」。
老人クラブで得た高齢者との出会いは小枝さんにとってかけがえのない宝物です。
「ポールのすばらしさに自信があっても、あくまで私の主観。本当に皆さんにわかってもらえるか、どこか不安がつきまといます。でも、ノルディックのポールをもって指導と販売に高齢者の家を回っているうちに、小枝さんは、指導する立場ながらも自分自身が高齢者に守られているように感じるんですよ」と小枝さんは言います。
「皆さん、とっても優しいんです。指導者資格は取ったものの、まだ知識も経験も浅い私の言葉を疑いもせず信じてくれました。人生経験が豊かで知識も豊富。人の失敗だって責めない。そんな高齢者の大きな心に直に触れ、“歳を重ねるとはこういうことなんだ”と知ることができたのもポールウォークのおかげです」
“ちょっと助けて”を言えますか
高齢者のココロとカラダに寄り添う小枝さん。「高齢者の良さがなかなか見えない社会です。若者の得意なことと高齢者の経験をうまくつなぐことができたら、もっと心豊かな社会になると信じています。それとね、高齢者が高齢者を支えるしくみも必要だと思っています。それも急がないといけない。もう、大きな問題が目の前まできているのに…そんな気持ちです。『ビンのふたが開けられない』『ダンボールが片づけられない』『古新聞をヒモでくくれない』そんな“ちょっと助けて”が素直に言え、ご近所さんや、できる人が『するよ』と手をあげる」
「人はそれぞれに特技があって、それが誰かの役に立つとなれば自然と元気が出るもの。“ちょっとお願い”と言い合えるまちなら安心して年を重ねていけます。高齢者同士、同じ時代を生きた者同士が、楽しくゆったりと支えあえる社会はきっと楽しいですよ。このポールウォークが個人の健康づくりだけでなく、そんな会話が生まれるきっかけとなって、支え合えるまちへと動きだしたらいいなぁ」
モノはココロ
小枝さんは朝早くから料理の腕を振るいます。仕事の合間をぬって独り暮らしや親しい高齢者に料理やお菓子を届けているのだとか。「スーパーのスイカは独り暮らしの高齢者には大きいから」と、スイカを切ってから届ける心配りも小枝流。直に届けることで、そこでの会話を大切にします。もちろん“実はこんなことで困っているの”って何気ないささやきも聞き逃しません。おいしい手料理と楽しい会話に高齢者からは、採れたて野菜のお返しがあったりして。「エビで鯛を釣ってますよ。自称『全国物々交換会』会長の心意気です」」と朗らかに笑う小枝さん。
高齢者と小枝さんの間を行ったり来たりしているのは“モノ”ではなく“ココロ”なのですね。「『高齢者、高齢者』なんて言ってるけど、実は私も高齢者。これも高齢者同士が支え合うしくみのひとつです」
取材後、ポールウォークをちょっと体験。なるほど、手が足をサポートして一歩が出しやすい。なにより背筋が伸びて自然と目線が上がります。いつもより高くなった目線から見えた景色はいつものまちを明るくしてくれました。うん、気持ちいい。