団体インタビュー
あの“感動シーン”が生まれるまでに。
スポーツトレーナーという仕事
トレーニングや医療の知識をもち、選手のフィジカル(身体)からメンタルまで総合的にサポートするスポーツトレーナー。浅居さんはサッカー部だった高校時代に、3か月間離脱するケガをしました。その際、スポーツトレーナーのサポートを受けたことをきっかけに、今の道にすすみました。
今では週に1?2回、サポートする高校や大学の練習に顔を出します。「スポーツトレーナーが職業として確立してきたのは、この10年ぐらい。最近では高校の部活でもスポーツトレーナーを置くところもでてきました」と浅居さん。
練習ではケガで離脱した部員の別メニューを担当したり、全体のフィジカルトレーニングやストレッチ指導を行います。遠征先では浅居さんの部屋にマッサージ台を持ち込むので、部員たちのたまり場となって賑やかだとか。
自分の心と闘う
スポーツトレーナーの大切な仕事の一つは選手からの相談対応です。「ケガや筋トレ、食事、家での生活についての質問が多いですね。高校生や大学生は経験も知識も未熟で、気持ちもまだ不安定。メンタルな部分がそのままプレーにも影響します。昨日までできていたことが急にできなくなって、後で聞くと彼女に振られたなんてこともあります。
特にケガで離脱している部員の心の持ちようは深刻。人に言えない不安や焦りと葛藤し、自分の心と闘っています。こんな苦しい胸の内を相談できない。だからこそ監督やコーチとは違う立場で身近にいるスポーツトレーナーに心を開いてくれるのかもしれません。『実は膝が痛いけど監督には言わないでほしい。どうしたらいいんだろう』って相談も正直なところあります」
イマドキ高校生
高校生の話は続きます。「最近の子はドライだとかクールに思われがちですが、意外と素直でまじめ、それに繊細です。大人にとって些細なデキゴトも子どもたちには深刻だったりして、それらを自分の心の中で一生懸命に消化しています。ずっとスマホばかり見ているような時も実はトレーニング法や憧れる選手のプレー映像を観ていたりします」
「“スポーツは根性”って世代じゃないので、理屈がないとトレーニングをしない面も正直あります。ただ、理屈や理由さえ納得すれば、今度はものすごい集中を見せてもくれます。親御さんにはぜひ、『部活どう?』って、コミュニケーションを取ってあげてほしいですね。大人でもなければ、子ども扱いもされたくない難しい時期のこと。当然、子どもは無愛想な素振りをみせますが、実は嬉しいものです」
高齢者には仲間づくりを
一方、浅居さんが代表を務める整骨院では「腰が痛い・肩が上がらない」といった高齢者のリハビリ、ストレッチ、肩こり改善の指導などを行っています。「整骨院とは名乗っていますが病院と整体の間」と浅居さんが言うように、ここでは病院のような治療も整体のようなマッサージも行いません。整形外科で働いた経験から治療後のリハビリや助言ができる場所の必要性を感じて開業しました。「でも、ここでの1時間のリハビリより家で過ごす時間の方が大切です。筋肉は使わないと、どんどん痩せていきます。運動量や食べる量も減る高齢者は日ごろの生活の中でも意識して正しい姿勢を心がけること、ストレッチでちょっと体を伸ばすだけでもずいぶんと筋力を保てるものです」
高齢者の運動で難しいのは継続すること。「同じ悩みを持つ人を見つけ、一緒に続けることをおススメしています。『今日は寒いから…』とやめる理由はすぐつくれます。続けるための動機づけを見つけることが必要なんです。地域は仲間づくりのための場所やきっかけを提供していくことを期待したいですね」