団体インタビュー
“ファミリー”から“大人”のマンションへ
マンションで町内会をつくる
築約20年。子どもたちも巣立ち始めました。「もちろん高齢化は進んでいますが、駅にも近くて生活には便利だから、若い家族の出入りも頻繁にありますよ。つい5~6年前までは40代が最も多い層でした。今、60歳以上は約170人。それでも高齢化のペースは他のマンションに比べて遅いほうかな」と大木さん。
大木さんが入居したのは6年前。他市の戸建て住宅から家族で移り住みました。車は運転はしますが、これから高齢になるにつれ不便なことが増えることを考えると、徒歩で日常の用をほぼ済ませることができるここでの暮らしを気に入っています。
今、大木さんはマンション単独で組織する町内会の会長です。「当初は地元の町内会に入っていました。その後、マンション独自で活動していこうということで、マンション単独の町内会ができたのだと聞いています。今から17年前のことです。町内会として学区の自治連合会にも入り、地元の行事や神社の神事にも連携しながら参加しています。町内会だけでなく、老人会や子ども会もマンション単独であります。子どもは減りましたね。ピーク時は200人近くいた小学生も今では50人です」
大人が楽しむクリスマス
それでもファミールハイツ草津町内会は元気です。夏まつりやクリスマス会、もちつき大会など住民同士が顔を合わす行事を活発に行いながら、今日もコミュニティを育んでいます。
子どもは減り、大人は徐々に歳を重ねつつあるマンション。これまでの町内会行事には、子どもや高齢者を対象にした行事はいろいろとありますが、マンションの中心世代である40~60代を対象にした行事が少ないことが気がかりでした。そこで昨年、「大人のためのクリスマス会」を町内会で開いてみました。思いきって「今回は大人だけね」と子どもの参加を止めにしたのです。
「はたして、住民は受け入れてくれるのか…」。そんな不安も吹き飛ばし、なんと70名の参加がありました。集会室で食事とお酒、そして生バンドの演奏です。バンド演奏は好評で、集まった年代層に合わせ、♪また逢う日まで ♪異邦人 ♪秋桜といった昭和歌謡やオールディーズのナンバーで「大人の時間」を楽しんだのでした。
サイクルシェア
分譲時、若いファミリー世帯が中心だったこのマンションでは、どの家庭でも通学や幼保育園の送り迎えなどに使う自転車があって、駐輪場が足りないくらいでした。子どもが大きくなると、自転車を使うことも極端に減ります。「自転車はもう使わないけど、なければないでやっぱり不便。」そんな家庭が増えてきたのです。
そこで、マンションの管理組合で自転車を購入し、住民なら自由に乗ることができるサイクルシェアを始めたのが約10年前。今では土日だと15台の自転車がすべて出払っていることもあるとか。「利用は5時間までというルールです。チョイ乗りの感覚ですね。私なんかは自転車に乗るのが好きだからよく利用しますよ。図書館に行ったり、お米やお酒などの買物があるときなんかは重宝しています」
変えること、変えないこと
自転車の貸出場所でもある管理事務所。たくさんのモニターがある部屋を抜けるとパソコンが置かれた2つの机が並んでいます。町内会と管理組合の事務を行うためのものです。
「特に分譲マンションは、建物が年を経るごとに、住民も歳を重ねていきます。町内会であれ、管理組合であれ、“今の住民の暮らしぶり”にいかに合わせていくか、どのように形成していくか、が難しいところです。そのためにも町内会と管理組合は常に協力しあいながら良好な関係を保つよう気を配っています。町内会の中でも『参加者が少ない行事を減らしては』という議論もあります。でも、住民同士の親睦を楽しみにしているという話を聞くと、なかなかね。少数の意見でも大切にしていきたいですし」
町内会長になって2年。大木さんの目下の悩みは次の役員の担い手だとか。
「やっぱり仕事をしている世代は忙しく、なかなか時間が取れなかったり関心が薄かったりで難しいところですね。積極的に町内会活動に関わる人が限定的なのはどこも同じかもしれません。高齢化に向かう今こそ、顔を合わすコミュニティが大切な意味をもってくるんだと、思います。」