団体インタビュー
伝統の美と笑顔を写そう
あきらめる人、見守る人
日本の伝統美、着物。着る機会が減ったとは言え、七五三、卒業式、成人式、結婚式…と節目節目には日本人の晴れの日を祝ってきました。着る人の気持ちを晴れやかにし、日本人としての喜びと誇りを感じさせてくれます。
でも、この「着物を着る喜び」を障がいがあることであきらめてしまう人もいます。その心残りを見守ることしかできない家族がいます。「障がいのある人にも着物を着る楽しみを味わって、笑顔になってもらいたい」そんな思いがこの撮影会につながりました。企画したのは市民ボランティア団体spring。代表の花岡さんがスタッフとして関わった枚方での企画を、ここ草津で仲間を集い実現しました。
撮影会当日。着物やドレスを身にまとったのは足が不自由な人など障がいがある12人の女性たち。花岡さんの声かけで、市内外から着付け師、メイクさん、ケアマネージャーなど、企画に賛同した15人のスタッフが集まりました。ただでさえ着るのが大変な着物。じっと立っているのが難しい障がい者には、体を支えながら複数の着付け師で素早く着付けていきます。
夢は叶う
着付けを終え、ヘアセットとメイクが整った人から順番に写真を撮ります。撮影はプロカメラマンの樺井良祐さん。風が強かった
り、雨が落ちてきたりとあいにくの天気の中、ワンカットごとに指示を出します。初めての経験に緊張する面々も、その優しい口調にリラックス。笑顔を引き出す術はさすがです。
樺井さんによる撮影が終わると、それぞれ自分のスマホでも記念撮影。普段と違う、いや初めてみる娘の姿を一生懸命にカメラに収めるご家族の表情にも目が留まります。その思いの丈を推し量ることはできませんが、感無量とはこういうことを言うのでしょう。
「着物がまぶしいぐらい、キラキラ輝いていた」「夢がかなった」
「写真を毎日、作業所に持って行っています」「SNSの写真をこれに替えました」参加者の感想にも心を打たれます。
花岡さんは言います。「今まであきらめていた着物を着ることで、たとえ障がいがあっても色々なことに挑戦する気持ちになってもらいたい。本人の笑顔が家族、そして周囲の人の笑顔へとつながるものと信じています。ここから、草津のまち全体が、障がい者への理解を深められたらいいな、と思います。」
知り尽くした人の知恵
本人から引き出す
チャレンジ精神旺盛で、出会う人、出会う人を笑顔にしてしまう花岡さん、その原点には辛い経験があります。昔から仕事大好き人間。起業し、バリバリと仕事をこなす最も乗っていた時期に、がんが見つかり余命まで宣告されました。そしてリーマンショック。会社の存続についても悩む日々。時を前後して、うつ病となった親戚を預かっていたこともあり、自身も同じように何事もマイナス思考に陥ったとか。「こんな時は焦ってはいけない。きっと這い出せるところがあるはず」と通信制の大学で福祉を学びました。
「福祉に触れたことが、私には大きかったですね。思い悩む人を
引っ張り上げようとするのではなく、本人が望んでいることを引き出す。時には本人すら気づいていないことさえあります。そんな眠っている力を寄り添いながら引き出すと、実はすごいパワーになるんです。これって年齢や障がいの有無なんて関係なく、誰もがそんなパワーを秘めているんですね」