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まちサポくさつ (公財)草津市コミュニティ事業団

団体インタビュー

緑のはらぺっこ食堂

I.キャンバス 今村崇志さん

人生を変える出会い

カレーを運ぶ  開店2時間前、エプロン姿の女性たちは調理室に入りました。アイ・ドット・キャンバスのメンバーは子どもたちと一緒に、手書きのウェルカムボードを作ったり、受付や設営の準備です。この、アイ・ドット・キャンバス。20代中心の若手メンバーながら、チームワークも手際の良さもバッチリ。子どもたちとの接し方なんて、と
ても初めてには見えません。

 「私は大学生のころ、常盤の学童保育でアルバイトをしていました。あのころのメンバーでアイ・ドット・キャンバスを創って、この活動を始めたんです。中にはそのまま学童保育の職員になった者もいますよ」と今村さん。なるほど、どうりでチームワークの良さもナットクです。

 若い今村さんが子どもたちに関わるようになったのは、ある人との出会いから。
 「高校生のころ、部活の顧問の先生との出会いがありました。生徒一人ひとりと真正面から向き合ってくれる先生でした。僕はどちらかと言うと平凡で目立たないタイプ。でも、僕のどんな質問にも丁寧に答えてくれ、時には一緒に考えてもくれました。そんな先生を見て、僕も子どもに関わりたいと思うようになったんです。大学では教育学を専攻しました。

子ども食堂

看板  そのころ、始めたのが常盤での学童。初日のことは今でも覚えています。あまりの緊張で何も動けずにいた僕を、一人の女の子が『トランプしよう』と手を引っ張ってくれたんです。助かりました。その子は今、女子高生。今でもみんなで食事に行ったり、部活の傍らこの活動を手伝ってくれたりもします」

 大学を出て、念願だった子どもに関わる仕事に就いた今村さん。社会人としてがんばる傍ら、「常盤の子どもたちに何かお返しができないか」との思いが頭をもたげてきます。そんな時に知ったのが子ども食堂でした。
 「子ども食堂というと、子どもの貧困や孤食に対する社会活動のように思っていました。そんなとき『滋賀の縁創造実践センター』の『遊べる・学べる子ども食堂として地域ぐるみで子どもを大事にする垣根のない居場所づくり』という理念を知って共感しました」

遊びから学ぶ

2人  特に印象に残ったのは「遊べる学べる子ども食堂だった」と今村さんは振り返ります。「学校では〝授業〟というカリキュラムに沿った学びがあります。一方、ここでは子どもたちが 〝遊び〟の中から自ら学んでいく場になればと思っています。自分たちでやり方もルールも決める。ケンカになったら、自分たちでなんとか折り合いをつけ仲直りする。もし困っている子がいたら、その子も楽しめる方法を自分たちが考える。
 性別や年齢、障がいの有無や得意不得意も全てを織り込んで、一緒に考え、話し合える場。遊びを通して学び、成長できる居場所をつくっていきたい。
 たとえば、鬼ごっこをしたい子は、ホワイトボードに『●時●分から▲▲で鬼ごっこをします。やりたい人あつまれ!』って書くとか。言いだしっぺは子どもでも誰でも構いません」

みんなでつくる

調理室  緑のはらぺっこ食堂が大切にしたいことは他にもあります。それは「みんなでつくる食堂、人のつながりを感じる食堂」になること。食事を提供する側・される側に分かれるのではなく、ご飯を作るのも遊びを考えるのも、食堂自体の運営だって、対話しながら自分たちの場を創っていこうと考えています。

 今日のメニューはカレーライスとコロッケです。豚肉とコロッケは守山の肉屋さんが、野菜とお米は近所の農家さんが提供してくれました。場所や設備はまちづくり協議会にお世話になっていますし、調理スタッフには民生委員さんや学童保育のスタッフ、保護者さんにもお手伝いいただいています。

 子どもたちにはこうした色々な大人や友だちとのつながりの中から、私が顧問の先生に感じたような「人に憧れる気持ち」や、色々な人の考え方・価値観を認め合えるようになって欲しい。そしてそれは私をはじめ、関わってくれる大人一人ひとりにもそのまんまいえること。みんなで「緑のはらぺっこ食堂」を創っていきたいものです。

今村さん  ちなみに「アイ・ドット・キャンバス」とは「私自身が絵を描いていく空間」という意味を込めているそう。ここに来る子どもたち一人ひとり、関わる大人一人ひとりが、自分の人生を描き、幸せな場所をつくれたら、とメンバーみんなで話し合った大切な名前だとか。
 何より、こうして若い人たちが、まちの子どもや大人に関わりを持とうとしてくれる姿が頼もしく映ります。心が浮き立つカレーの香りが漂ってきました。子どもたちはもうしっかり、はらぺっこな様子。「みんなで食べる」って、なによりのごちそうですね。

 さぁみんな、お腹いっぱい召しあがれ

取材・掲載

コミュニティくさつ118号 2018.9月
「まちなか先生、みっけ」より

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