団体インタビュー
動け! ぼくのレゴ
動くレゴブロック
夏休みのとある週末。市立まちづくりセンターの一室に数人の子どもたちの姿。下はまだ学校に上がっていない子から上は中学生まで、中には一緒に来たお母さんの姿もみえます。みんな好きな時間に来て、好きな時間に帰る。席だってバラバラ。パソコンやタブレットを触ったり、ブロックを組み立てたりとそれぞれで没頭しています。作業の音とボソボソした話し声だけの空間。どこか心地よい静けさです。
今日は草津05倶楽部の活動日。活動と言っても、最初から最後まで、こんな調子でゆっくり時間が流れます。
「まだ軽そうだね。もっとガッチリ固めてみようか」「もっとパワーを上げてみてもいいんじゃない」。部屋に広げられたコースでブロックの車を走らせようとしている男の子に山口さんがアドバイスしていました。
理論的思考と工夫する楽しさを
デンマーク生まれのレゴブロック。誰もが知っているこのおもちゃで創った車やロボットを、コンピュータのプログラミングを使って自在に動かすことで、子どもたちの論理的な思考や工夫する楽しさを育む草津05倶楽部。
「活動を始めて11年、これまで200人以上の子どもたちが来てくれました。今日来ている子は、実は以前にお兄ちゃんについてきてた弟さんです。ここに来てモクモクと組み立てる子や、ブロックはもう卒業してプログラミングだけをしたい子など、子どもたちそれぞれの性格が出てきます」と山口さん。
レゴブロックとプログラミングというと、やはり男の子が多いようですが、そんなこの会の運営を女性がしているのも興味深いところです。
その動きに理屈あり
レゴブロックはともかく、〝プログラミング〟なんて言われる
と、ちょっと腰が引けそうです。「プログラミングってコンピュー
タにさせる作業を順番に書いていくことです。例えば運動会のプログラムなら、競技を順番に書き出してありますよね。人の流れや時間を考えてプログラムをつくらないと現場は混乱してしまいます。実現したいことを論理的に考えないとうまくまわらない。プログラミングはそういう論理的な思考を身につけるためにぴったりの作業なんです。2020年度にはこのプログラミングが小学校でも必修化されることになったんですよ」。なるほど。
でもコンピュータ言語とか、やっぱり難しそう。「最近はソフトやアプリができて、難しい言語なんか知らなくても、遊び感覚でサクサクとできるようになっています。今の子どもたちは小さな時から、ゲームやスマホに慣れているから、操作なら私よりずっと早いですね。」
熱中できる場を創る
苦戦しているさっきの男の子に山口さんはネットの画面を見せながら「賞をとったマシンは、坂を上がるときと下るときで重心の位置を変えているみたいだね」と次のアドバイス。すると男の子は何か思いついたように、車を分解し始めました。えっ、せっかくつくったマシンなのに…。
「〝坂を上る〟って動作だけでも、色々な要素が絡むんです。今みたいにプログラミングだけでは解決できないことだってあります。ブロックでつくるマシンの形状や重さなんかも関係してきます。それにどうせならカッコイイものを作りたいので、デザインだって凝りたくなりますよね。こうして子どもたちは〝やってみる、工夫する〟ことを繰り返して、目の前の困難を乗り越えようとします」
子どものころから数学が大好きだった筋金入りのリケジョ(理系女子)の山口さんは言います。「子どもたちの好きなことって一人ひとり違います。スポーツが好きならスポ少に、音楽が好きなら吹奏楽に、ってね。こうしてレゴやプログラミングが好きな子が熱中できる場を創りたくて活動を始めました。場所は創っても、私はここではあえて何も言いません。〝やらされる〟より自学自習のほうが、楽しいし身につきますから。思うように動かなくて困った時だけ私にSOSを求めにくるので、ちょっとヒントを出すぐらいです。」