団体インタビュー
12枚のカレンダー
今できることを楽しむ
朝9時すぎ。車イスで来る人、送迎されてくる人、と次々と出勤してきます。郊外の広い所でなく、人通りの多い商店街にあえて事務所を構えているのには理由があります。駅から近いこと、そして障がい者もまちの構成員であることを、周りの人だけでなく本人たちにも意識してもらうためだとか。
この草津事務所では障がい者・健常者を含め、約35名が働きます。吉田さんはDTP印刷部門のリーダーを務めます。
実は吉田さん、生まれながらにして徐々に身体の自由が奪われていく「筋ジストロフィー」という難病。10年前から車イス生活となりました。それでも動くことが大好き、何事にもチャレンジする性格で、様々な障がい者スポーツにも挑戦しながら、一人暮らしで自立した生活を送っています。
「幸い、ゆっくりと症状が進行する型だったので、今できることを見つけては精いっぱい楽しんでいます。やがて、今できていることもできなくなってしまいます。その時はまた、できることを見つけて楽しみます」
吉田さんに脱帽です。
筋金入りの素人だった
別の作業所からここに移ってきたのは6年前。「筋金入りの素人だった」というデザインの勉強も、持ち前の前向き思考でどんどん吸収してきました。
「この仕事を始めてからは電車の吊広告でも街角のポスターでも、目に映るデザインの一つひとつが気になるようになりました。
今ではデザインって本当に楽しいなって思います」
そんな吉田さんも今やメンバーを束ねる役割。事務所の障がい者一人ひとりに、今の能力にあった仕事を割り振ることが仕事の中心となりました。障がいのタイプは様々で、その人の能力やペースだけでなく、その日の状態や調子をみて、コミュニケーションを取りながら仕事を進めてもらいます。
大変な仕事ですが、作業所同士のコンペで通過したときや、私が言わなくても自分から準備して仕事を始めているとき、以前よりデザイン力がアップしたときなど、メンバーの成長を感じることが今のやりがいです。
最近はチラシや広報紙の作成などが中心です。「私も営業をしているので、もっと宣伝してこの子たちが成長できる仕事をとってこないといけないと感じています」
リーダー、そして黒子
12枚のカレンダー
年末が近づくと、受注カレンダーだけでなく、アイ・コラボレーションとしてもカレンダーを作成します。お得意先への営業グッズですが、メンバーのデザイン力を高める目的もあるので、テーマを課してみんなに作品を一点ずつ創ってもらいます。とはいえ、一年は12か月しかありません。つまり来年のカレンダーに採用できるのは12人と、狭き門です。
「それでもみんな年末の忙しい合間を縫って、お世話になったお客さんの顔を思い浮かべながら一生懸命に創ってくれるのが嬉しい。残念ながら選ばれない子もいるので気も遣いますが、そんな悔しさも自分の中で消化して、次への糧にしてくれています。一人ひとり視点もタッチも違うけど、一つのカレンダーとなったときにむしろ良い味になっています」