団体インタビュー
おなかいっぱい、ココロもいっぱい
五感を総動員
夏の日差しを思わせる5月の日曜日、フェリエ南草津の調理室に10人の小学生が集まりました。今日は「子どもキッチン」。調理や食事を楽しみながら、「食」について様々な角度から学ぶ料理教室です。本日の献立は鹿肉と地元野菜を使ったカレーです。えっ、鹿肉
!?そう、今日は鹿肉を食することで獣害と自然との共生について子どもたちに知ってもらう試みです。
子どもキッチンは買い出しからスタートします。子どもたちはグループに分かれて近くのスーパーへ。大学生から地元産の食材を食する意味や新鮮な野菜の見分け方を教わり、値段だって見比べながら自分たちで食材を選びます。戻ると米を炊き、野菜を切っていきます。ケガやヤケドしないための手際、作業の意味、段取りや片づ
けなど、大学生とおしゃべりしながら自然と学んでいきます。家
ならお手伝いでも、今日は最初から最後まで自分たちが主役。炒め具合、煮込み加減、食材を入れるタイミングなど五感を総動員します。その眼差しは真剣そのもの。
カレーを煮込む時間をうまく使って獣害の話。「人里で野生の鹿が出ると、田や畑に被害がでます。仕方なく鹿を駆除しないといけません。駆除した鹿でも、今日みたいに美味しくいただけば山の幸になります。こうして森と共に生きていく工夫が必要なんだね」
子どもたちは本物の鹿の角を触りながら、初めて聞く話に興味津々です。
ちがいを知ることは、故郷を知ること
立命館大学びわこくさつキャンパスに「食」を通じて経済学・経営学・科学など様々な分野から「食」について総合的に学ぶ食マネジメント学部が全国に先がけて誕生したのは2018年。パンチャピエーナはこの食マネジメント学部の学生を中心に構成されているので、今年で活動2年目。まだ2回生と1回生のみのフレッシュな顔ぶれです。
今の2回生が入学して間もなく、小浜市で研修がありました。小浜は万葉集や平安の記録にも残るほど古くから天皇に海産物などを献上されていたとされる「御みけつくに食国」として、今でも食文
化の継承や食育を大切にしているまちです。地元の農家や漁師の話、魚を釣り自らさばいて食べる体験、伝統料理を伝える職人の技、見るもの聞くものどれも食育の大切さを感じました。
また、小浜の子どもたちに向けた食育イベントを行う機会を与えてもらい、「醤油のテイスティング」をすることにしました。産地の異なる種類を用意し、子どもたちに味のちがいを確認してもらいます。
この企画は出身地のちがうメンバーが滋賀に来てから、故郷の醤油の味のちがいに驚いた経験から生まれました。郷土愛を育むためには子どもたちが地元の味をしっかりと身につけることが大切なんだと改めて感じたとか。
食は心を満たす。幸せをつくる
小浜での体験はパンチャピエーナの原点となりました。入学してわずか2か月でしたが、「この先、大学で得る学びを地域に活かしたい、そんな場が必要」と考えた萬福さん。数名の友だちに伝えたところ、同じ思いのメンバーが集まり、グループとなりました。名前はイタリア語の教授が「食は心を満たすもの。食は幸せをつくるもの」との意味を込めて「パンチャピエーナ」と命名してくれました。
こうして草津での最初の活動として、スローフードユース滋賀と全日本学生料理協会との共催で行ったのが冒頭の「子どもキッチン」です。
パンチャピエーナの夢は広がります。この「子どもキッチン」を月に1回のペースで続けるとともに、子どもたちが農業体験と農に関わる暮らしを経験する農家民泊ができないか、と現在計画中。これは萬福さんが故郷・鹿児島で子どものころに体験したことが土台になっているそうで、夢は膨らむばかりです。